せとさんスポーツ

新聞にありそうな話題となさそうな話題をゆる~く雑記。ドラマ「相棒」と「100均」の記事は熱く攻めますよん。

【ドラマ感想文「相棒16-1検察捜査」】「黙っていろ!」と右京さんに一喝されてから半年。黙っていた自分にサヨナラする時が来た。

はじめに

「想像が及ばないのなら、黙っていろ!」
杉下右京が冠城亘を一喝したのは、「相棒15」の最終回でした。
あの時の右京さんの怒りは、私の「時」を止めてしまいました。
世の中は、自分には想像の及ばないことだらけです。自分は、たいした根拠もないのに、知ったような口ぶりで意見を述べているだけではないのか。それが誰かを傷つける結果になってはいないだろうか。誰かを傷つけるくらいなら、私は何も言わないほうがよいのではないか。

圧力に屈せず勝手に動き出す右京さん

私の時を止めたのは右京さんではなくて、自分自身の意思であることに気がつきました。
想像を及ばせれば、すぐに答えは出たはずです。
黙りがちになりつつも思考を停止させないように努めてきた自分が、半年たった今、成長できているかどうかを「相棒16」の初回放送を見て、判断することにしました。
あの時、自分の手で封印した時間の流れを、再びスタートさせるには、このタイミングしかありません。

「相棒15」には「窓際の二人が、また勝手に動きだす。」というキャッチコピーがありました。今シリーズは、事前にキャッチコピーはとくに見当たりませんでしたが、初回放送で、特命係の二人は、当然のように、また勝手に動き出しました。
特命係を目の敵にする警視庁の衣笠副総監が、警察庁官房付の甲斐峯秋に特命係の管理権限を押しつけようとする気持ちが、わかるような気がしました。
特命係の二人、とくに杉下右京は、自由気まますぎます。かつて「相棒劇場版2」の公開時に、水谷豊さんが「ゾーンに入っている」と手ごたえを述べていました。右京さんは、今まさに、ゾーンに入っています。
上からの圧力に屈せず、自分の好奇心に忠実に行動する右京さんを見ていて、痛快な気持ちになります。

「相棒16」の初回タイトルは「検察捜査」です。「相棒」に検察の話が絡むと、必然的に「正義とは何か」がテーマとして浮かびます。
今回は、過去回で法務省の日下部事務次官が右京さんに「君が考える正義とは何か?」と問いかけたシーンが回想として登場しました。
右京さんは言いました。
「お言葉ですが、法を破って守れる正義など、僕はないと思いますよ」と。

伊丹刑事のセリフが10年前の名作を呼び覚ます

ストーリーは、妻を3回殺したとされる平井を、右京さんたちが連携して追いつめていく形で進行しました。
警察では、これから原則として取り調べを録画録音するそうです。しかし、捜査一課の伊丹刑事と芹沢刑事は、被疑者の平井さんに、録画録音を拒否させました。
この時、伊丹さんは、録画録音など、どうせ後で警察が編集していいところだけを使うのだからと、平井さんを誘導しました。
「編集された映像に真実はない」
これは名言だなと思いました。私たちは、過去については、自分に有利なものだけを編集して、それを他人や自分に見せて生きることが可能です。逆に、未来は編集できません。

伊丹さんのセリフを聴いて思い出すのが「相棒6」の第9話で放送された「編集された殺人」です。この回は、警察ではなく検察の人間が、取り調べで自分たちに有利になる部分だけを編集し、裁判の証拠として提出していました。
検察官は終盤で「こっちは警察の尻ぬぐいをしてやったんだ。警察の取り調べこそ録画録音するべきなんだ!」と論点をすり替えようとして、右京さんに一喝されていました。
10年前に右京さんと亀山くんが執念で真相を暴いた、誤解による悲しい殺人事件のことを、伊丹さんは覚えているはずです。だからこその「編集された映像に真実はない」。暴走かもしれないけれど、そこに伊丹さんの正義を感じました。

「編集された殺人」では、右京さんは「違法に取得した証拠に法的な証拠能力はありませんよ」とも言っていました。右京さんが日下部さんに問われて答えた「法を破って守れる正義などない」とほぼ同じ主張は、右京さんの考える正義が、少なくとも10年間はブレていないことを教えてくれます。

特命係の孤立を助けそうな人物が浮かび上がる

他人の違法には厳しい右京さんですが、自分が真実を突き止めるためには、しょっちゅう違法行為をしています。このあたりのやんちゃさを、衣笠さんは「冠城亘には杉下右京という上司がいるが、杉下右京には上司がいない」という指摘で表現しました。

今回は、検察の田臥さんが、特命係の暴走について、伊丹さんや社美彌子さん、月本幸子さんにまで事情を訊き、調査しています。
このあたりは「相棒9」の第16話「監察対象・杉下右京」を思い出す流れです。
思えばあの時、右京さんを目の敵にする監察官に対して、神戸くんだけでなく伊丹さんや米沢さんが右京さんをおとしめる発言をしなかった上に、監察官の上司である大河内首席監察官も、右京さんを頼りにしていました。
「相棒16」では、特命係の孤立が深まる展開を予感させる含みがありますが、特命係を利用してのさばっているレギュラー陣が、いざという時に右京さんたちに助け舟を出してくれそうな気もします。

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「相棒」は考える教科書

あまり先のことを考えると、右京さんにまた「想像が及ばないのなら、黙っていろ!」と叱られてフリーズしてしまいそうです。
右京さんたちの未来を想像することは、連続ドラマとしての「相棒」の楽しみです。一方で、その回を見終えて、自分がどんな感想を持ち、そこから考え抜いて得た結論を、今後の人生にどう生かすかという点で未来を想像することが、単発ドラマとしての「相棒」の魅力です。
「検察捜査」を見ながら、あるいは見終えてから、思考や想像が広がる楽しさに包まれています。

「劇場版2」で小野田官房長は右京さんに「まさか絶対的な正義がこの世にあると思ってる?」と冷めた視線で問いました。
「相棒13」第15・16話では鮎川教授が、右京さんや社さんたちに「なぜ人を殺してはいけないのか?」という試験を課しました。
この2つはわかりやすい例題です。このドラマは毎回、何らかの課題を視聴者に出してきます。事件の真相をつまびらかにするストーリーでヒントを与えられながら、私たちは、正解なんてあるのかどうかもわからない問いについて考えます。
官房長風に表現すると「まさか絶対的な答えがこの世にあると思ってる?」でしょうか。
解答の提出期限を区切るとすれば、次回まで。

期限が次回までなら「相棒15」最終回の解答提出期限は、半年後の「相棒16」初回放送までとなります。

右京さんに一喝されて、私はなぜ時を止めてしまったのか。止まってしまった時間を再び動き出すにはどうしたらよいか。動き出した自分の針路は間違っていないだろうか。

私は「相棒16」を見ながら、期限ギリギリに提出したレポートの答え合わせをしました。

想像が及ばないことも、黙っていることも、違法ではないし、自分を守りつつ、誰かを傷つけないように、はかどらない想像を及ばせた結果として、黙っていたのかも知れません。

半年前、自分の恐怖から避けるために立てたアンテナが、今は自分の好奇心を刺激するアンテナに成長しました。

おわりに

「検察捜査」は、1話では終わりませんでした。次回に続きます。初回を見逃した人のために、テレ朝は週末に第1話を再放送するようです。

私は右京さんたちによって少しずつ明らかになってきた、平井さんの「不要品の最後は焼却」について、次回までに考えておきます。平井さんの母親が人形を焼いていたシーンが記憶に粘りついています。人はそれぞれ、他人には見えない闇を抱えて生きています。
編集してしまえば他人をごまかせると腹をくくっても、自分と、あと右京さんをごまかすことはできません。

次回も見逃せません。
そして、フィクションとして製作され、さらに編集された映像に、真実はありません。たぶん。

 

【相棒season16第1話「検察捜査】

脚本・輿水泰弘監督・橋本一

出演・水谷豊、反町隆史、中村俊介、中村ゆり、芦名星ほか

 

次回【16-2「検察捜査~反撃」感想文はこちら】

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