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【ドラマ感想文「相棒16-4ケンちゃん」】もし自分の前に純真無垢な青年が現れたら。

この記事では2017年11月8日に放送された「相棒16-4ケンちゃん」の感想を記述しています。

他人と比較して生きている

人は自然に、他人と自分を比較しています。
他人と自分の優劣を位置づけて、自分が相手より低いところにいると自覚した時に、葛藤が生まれます。
しかし、同じ世界に生きる人、あるいは生物すべての命を平等にとらえ、疑うことをしない人もいます。
「相棒16-4ケンちゃん」に登場したケンちゃんは、残り30円のプリペイドカードを落とし主に届け、知らない人が失くしたキーホルダーを探し続ける青年でした。
「ケンちゃん」というタイトルなのに、ケンちゃんは冒頭から死体で発見されます。
ケンちゃんは、なぜ殺害されなければならなかったのか?
生前のケンちゃんは、どんな人物だったのか?
右京さんと冠城くんの2人が、事件の核心に迫っていきます。

心の中の上下関係

ケンちゃんは数学の分野で特異的な才能を発揮する人物でした。彼がその能力を身につけたのは、2年前に起きた事件に巻き込まれた際のケガと因果関係がありました。
ケンちゃんが、それまでに無かった能力を身につけたことによって、周囲の人々の心に変化が生じます。
人の心は見えません。
ケンちゃんの心も見えません。
しかし、ケンちゃんは、どこまでも純真無垢に見えます。
その姿に尊敬する人もいれば、恨みを持つ人もいます。

ずっとチヤホヤされてきた人が、自分よりチヤホヤされる人の出現により、自分が貶められたと感じてしまう。
葛藤が生まれます。
ケンちゃんに対する間違った行為の一つは、ケンちゃんを犯罪の道具として利用することでした。

あるいは、殺人でした。

犯人の動機は、あまりにも身勝手です。

殺人に手を染めた人は、相応の罪で裁かれます。

自分の方が立場が上で、邪魔者を屈折させようという心理のおぞましさを感じます。

しかし、今回の話を見て、では実際にケンちゃんのような人が目の前に現れたら、自分が平静でいられるかどうか、と考えて、怖くなってきました。

金井寛脚本が徹底する「葛藤」

「ケンちゃん」の脚本を担当したのは、金井寛さんです。
「相棒」には、脚本家が複数、参加しています。回によって雰囲気やストーリー展開が異なる点が、魅力のひとつです。
前回の「相棒16-3銀婚式」では、純真無垢な人が、自分をだましていた人物に殺意を抱く話でしたが、今回は、純真無垢な人が殺されてしまうストーリーでした。180度異なる視点の話が発生するのは、違う人が脚本を担当するゆえの面白さです。
今回の作品は、漢字の「中」に見えるダイイングメッセージや、難解な数式がたくさん出てきます。
金井さんの作品では「相棒12-2殺人の定理」と似た作品です。
「殺人の定理」では、殺人事件の被害者が残した「adrink」というアルファベットの小文字を円で囲んだダイイングメッセージの謎や、世紀の難問と言われる「ファーガスの定理」をめぐる隠された事実をめぐって、右京さんと大学の教授が知恵比べをしつつ、真相が解き明かされるストーリーでした。

かつて大学の研究室で熱い数学議論を交わした2人の、数学に対する考え方の違いが、葛藤や摩擦を生じさせてしまいました。
今回も、ダイイングメッセージや数学の公式をめぐる難問に右京さんがチャレンジしていますが、話の中身はまったく違います。

ケンちゃんに対する、周囲の人たちの葛藤が重心にあります。
金井さんが描く作品は、人が他人と接する際に起きる葛藤や摩擦と、その変化を、視聴者の心に響かせます。
この2つの作品を見ると、金井さんはめちゃくちゃ理系に秀でた人なんだろうなあと、文系を歩んできた私には単純に感嘆します。
ただし、そこにはもう葛藤が生まれているわけです。

私は金井さんを勝手に自分より上に見て葛藤しています。

自分と他人を比較して自分のランクを決めているフシがある自分に気がついたときに、ぞっとする感じに包まれます。

 

ケンちゃんもじつは葛藤まみれ

人の葛藤をつまびらかにする作品が多い金井さんが、ケンちゃんという「ほぼ何の葛藤もなさそうな人」を登場させることで、いつも以上に人々の葛藤を浮かび上がらせています。
ケンちゃんにも葛藤はあります。
恋をして、告白して、フラれました。
ケンちゃんはフラれたことを兄に話し、兄はケンちゃんを元気づけました。
兄は、ケンちゃんに「ごめんなさい」した女性と付き合っていて、2人ともケンちゃんには黙っていました。

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兄は、これまで自分が1人で弟を世話してきたのに、ある日突然、弟が天才的な能力を身につけたことに、憎しみを抱いてしまいました。

些細な摩擦かもしれません。

右京さんの言葉を借りるならば「兄弟というものは、時として複雑な感情を持つもの」です。

同じ家に住む、血のつながった家族という人間関係の近さが、仇になってしまうことがあります。

ついに冠城くんに共感!

金井さんの作品は、レギュラーキャラクターの肉づけのうまさも際立っています。
人は「怒り」に敏感です。
「相棒」の視聴者は、見ている人それぞれの視点での正義が、登場人物の正義に共感すると、そのキャラクターに対する思い入れが深まります。
今回の作品は、冠城くんとケンちゃんが出会ったところから話がスタートしました。
犯人がケンちゃんを殺害した理由は、あまりにも身勝手です。

犯人は、自分の罪が暴かれると、自分が相手を殺したのは当然だと身勝手に振舞います。最後まで、死者に対して上から目線でした。
ついに冠城くんがキレて、真犯人につかみかかります。
右京さんが「かぶらぎくん!」と叫んで、必死に止めたほどです。
冠城くんは、シーズン14から参加して今シーズンが3期目です。これまで、ひょうひょうと右京さんに接してきた冠城くんについて、まだどんな人物なのか判然としていませんでした。
今回、冠城くんの正義の一端が伝わってきたことで、冠城くんと視聴者の距離が一気に縮まった気がします。少なくとも私はそう感じました。
最後のシーンで、冠城くんは右京さんとともに、ケンちゃんの死体が発見された場所に花を供えに行きます。
推理の右京さんと、感情の冠城くん。

いよいよ2人の対比がはっきりしてきました。

次回までの宿題

 来週の予告編に、鑑識課から警察学校に異動した米沢さんが出てきました。
来週は米沢さんが出てきます。11月15日です。
「来週は米沢さんだー!」と楽しみになると同時に、来週の放送まで、「相棒」を人生の教科書と位置づける私は、今週出された問いについて、考え続けようと思います。
金井作品の過去回を振り返ると「相棒12-17ヒーロー」では、主人公は、自分がヒーローであることを否定し、復讐を果たそうとしますが、やっぱりヒーローになります。

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1時間弱の話を受けて、最後に「花の里」で、幸子さんがカイトくんに「カイトさんのヒーローは?」と質問しました。
「相棒12-5エントリーシート」では、いちばん大事なことを就活のエントリーシートに記入しなかった大学生が殺害されてしまった話を受けて、甲斐パパが右京さんに、カイトくんのことを問いかけます。
「なぜあいつは警察官にこだわるんだ?」
この問いには、最後にカイトくんが「なぜ自分が警察官になったか」を語り、「解答例」を示しています。
金井さんが、その回で何を問いかけてきたのかについては、深く考える必要はないのかもしれません。
今回は、
「もし自分の前にケンちゃんが現れたら?」
これは、深く刺さる問題です。
私はケンちゃんとうまく接することができるでしょうか?
最後のシーンで、ケンちゃんの死体発見現場にはたくさんの花が供えられていました。
自分は献花するだろうか?
単純に「できる」「できない」では答えられない気がしています。

 

【問題】もし自分の前にケンちゃんが現れたら、自分はどう接しますか?

 

人は、他人の心はわからない。

他人からは、自分の心はわからない。

しかし、人は自分の心が、他人に見透かされている気がしてしまうことがある。

自分には、隠しておきたいことがたくさんある。

自分じゃない人も、隠しておきたいことがいろいろあるんだろうな、と思うことで、安心したい。

人の心と心の抑止力。

そこに現れた、曇りが一点もなさそうな人物。

私は、どう接するだろうか。

私は「耐えられる」だろうか。

なぜ「耐えられるかどうか」などと自分に問いかけるのか。

考えないで、逃げてしまいたくなる問題です。

なぜ、考えないで逃げ出したくなるのか。

そもそも、私は自分の問いに対する、自分の中での模範解答を知っています。

ケンちゃんは、大学入試の問題の中に、選択肢に正答がない問題があることをみつけました。

彼は、答えがないことに葛藤します。

私は、答えがあることに、葛藤しています。

 

 

たぶん、実際に出会ったら、即、友達になっちゃうと思うんだけどね!

 

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