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【相棒16第7話「倫敦からの客人」感想】もし自分の息子が何年も前から殺人鬼だったら。

この記事では2017年11月29日に放送されたテレビドラマ「相棒16-7倫敦からの客人」の感想を記述しています。

「ぼくは普通じゃないから」

「ぼくは普通じゃないから…」

ドラマの後半で放たれたこのセリフが、深く突き刺さりました。

自分は普通じゃない、あるいは、自分は普通じゃないのかもしれない、ということに悩んでいる人が、たくさんいます。

ネット上には、この悩みに対する「解答」があふれています。

「解答」は、まず世間で使われている「普通」について解説し、その「普通」にとらわれなくていいんだよ、と教えてくれます。

「誰かの普通とあなたの普通は違う」。その通りだと思います。

「ありのままの自分と向き合って」「そのままの自分を受け入れて」というアドバイスをしてくれます。

もし「自分は普通じゃない」と感じていて、「ありのままの自分」が「人を殺すことに何の抵抗もない自分」だったら。

殺人衝動を持つ人が、どこかの誰かが気軽に発したアドバイスに背中を押されて、恐ろしい連続殺人事件を起こしてしまうことが、あるかもしれません。

 

「光を照らせば必ず影ができる」

【相棒16第7話「倫敦からの客人」】は、連続殺人事件にまつわる、入り組んだ構成のストーリーでした。「倫敦」と書いて「ろんどん」と読みます。イギリスです。

派遣社員の中年男性の遺体が発見されました。付近に落ちていた携帯電話には、犯人らしき人物が映った動画と、「ダークウェブ」にアクセスした痕跡がありました。

「ダークウェブ」は、インターネットの裏社会。大麻や拳銃が売りさばかれているサイトもあります。

右京さんと冠城くんは、男が映っている動画を調べて場所を特定しました。現場には2人分の死体がありました。1人はホームレスの男性、もう1人は10代の家出少女。どちらも数年前に殺害された模様。

さらに動画に映っていた男も、大麻を売買していたアジトで殺されていました。

4人の死。

ロンドンで右京さんの相棒だった元刑事が、この事件についての推理を右京さんたちに披露します。

元刑事はドラマの冒頭でこんな話をしていました。

「犯罪を無くすことはできませんでした。光を照らせば必ず影ができる。光を照らせば照らすほど、影が濃くなっていく」と。

 

「いつかすべてを照らしてみせます」

ドラマ半ばの9時半過ぎに、殺人犯が逮捕されました。

ドラマ終盤の9時40分過ぎに、また殺人犯が逮捕されました。

ここで物語が終わりかと思っていたら、9時50分あたりに「ラスボス」が登場しました。ラストに現れるボス。どんでん返し。終わらない物語。

前回の「ジョーカー」は、2時間サスペンスドラマを54分に凝集したような濃密なストーリーでした。

今回は、54分の濃密なドラマが終わって「その先を見せてくれ!2時間スペシャルにしてくれ!」と思わずにはいられない、絶妙な終わり方でした。

その先を見たいのだけれど、そこは視聴者の想像にまかせるという。

「いつかすべてを照らしてみせます。影ができる余地などないほどに!」

と最後に言い放つ右京さん。

次のニュース番組が始まっても、脳内では「水谷豊vs伊武雅人」の余韻が続いています。

「相棒すげえっ!」と、ゾワッときました。

 

徳永富彦脚本は自由自在

今回の脚本担当は徳永富彦さんでした。

徳永さんが「相棒デビュー」したのは2008年です。

右京さんの相棒が亀山くんの時代です。「相棒16」の第7話までの時点で、徳永さんは、メインの輿水泰弘さんに続くキャリアの持ち主です。

徳永さんの作品はバラエティーに富んでいます。

「8-17怪しい隣人」や「9-7.9時から10時まで」などはコメディータッチの作品です。ゲスト登場人物のダメダメっぽさとラストの大どんでん返しの落差に驚かされます。

「9-14右京のスーツ」や「12-6右京の腕時計」では、職人さんのこだわりと葛藤が細部まで描かれています。

「11-6交番巡査・甲斐享」や「13-11米沢守・最後の挨拶」では、レギュラーメンバーの個性の奥深さを引き出しています。

「14-17物理学者と猫」の不思議な物語。「15-7フェイク」における安達祐実さん演じる母親の心身喪失。どれを見ても「徳永作品をもっと見たい!」と思わせてくれます。

「倫敦からの客人」では、これまでの徳永作品では「フェイク」に近い、心の闇を深く掘り下げた話でした。

 

笑い出し、涙がとめどなくあふれ

少年は、母の死の際に、涙を流さなかった自分に疑問を持ちました。

人を殺しても罪悪は感じませんでした。

自分は普通じゃないと、ふさぎこみました。

そんな自分を、ほめてくれる人が現れました。

自分の行為に同意してもらえました。

自分は本当は優れた人間なのだと思い込みました。

殺しを望んでいる人はたくさんいるけれど、罰が怖いから実行しないんだ、自分はできるんだ。

少年は殺人鬼に成長してしまいました。

少年の父親は、息子の様子がおかしいことに気がつきました。

父親は医師に相談しました。

少年は父親を殺してしまいました。

父親は最後まで少年を守ろうとしました。

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右京さんによって真相が明らかになりました。

少年はパトカーの中で笑い出し、同時に涙がとまらなくなりました。

この場面に、私は彼の「心」を見つけました。

自分が「普通」とかけ離れ、残虐な行為をほめてくれる人が現れても、彼の心の根源にある「良心」がうずいて、葛藤していたんだ、と。

ネットの向こうの誰かより、リアルの身近な人に認めてほしかったんだ、と。

もう逃げられない状況に置かれて、少年はようやく、感情を解放できたのではないでしょうか。

彼が誰よりも「普通」になりたがっていたように、私には映りました。

 

 本当は怖い「ネットのお悩み解決」

 「自分は普通じゃない」と入力してネットで検索をかけてみました。解決策を提案するサイトがたくさん出てきました。「あなたは自分が普通じゃないと悩んでいませんか?こういう考え方はいかがですか?」と、優しく語りかけてくれます。

そのほとんどに「ありのままの自分」や「そのままの自分」という「魔法の言葉」が添えられていました。

ありのままの自分をさらけ出していいんだよ。

そのままの自分を認めてあげてね。

「普通」に束縛されない生き方についてアドバイスしてくれています。

もし、自分の殺人衝動を抑えられなくて、普通じゃない自分に悩みや不安を抱えている人が、アドバイスを読んで「ありのままの自分でいいんだ」と答えを導いてしまったら。

善意で解決策を提案した人が、どこかで悲惨な事件を誘発してしまうことも、無いとは言えません。

ネットの怖さの一面を見た気がしました。

 

善意と悪意は、紙一重。

倫敦からの客人の魂胆は、善意なのか。悪意なのか。

前回の「ジョーカー」を見た後、「ジョーカーとは何のことだったのか?」とずっと考えていました。

その解答編が「倫敦からの客人」だったのかもしれません。

 

次回までの課題。

1.「普通」って何だろう。改めて考えてみよう。

 2.ここ最近、ちょっと穏やかな冠城くんが、今どんな気持ちで、何を考えながら右京さんの相棒を務めているのか、想像してみよう。

ヒント(相棒15最終話)

右京「想像が及ばないのなら、黙っていろ!」

冠城「右京さん、あなた、何様?」

 

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