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【相棒10第4話「ライフライン」感想】もし借金まみれの自分が取り立て屋をやらされたら。

この記事ではドラマ【相棒】史上に残る衝撃回となった「season10第4話・ライフライン」について記述しています。

 

リーマンショックと物流業界

道路を眺めると、大手宅配便会社や「○○運送」と会社名が表示されているものなど、物流関係のトラックを見ない日は無くなりました。

帝国データバンクが発表した統計によると、2016年、道路貨物運送業者の総売上高は6年連続で増加し、20兆円を超えました。

その大きな要因は、インターネット通販の普及による貨物個数の増大と言われています。

総収入額が増え始めたのが2011年から。

2010年は、リーマンショックの影響などで、総収入額が前年より5.5%減少し、18兆円を割り込んでいました。

「ライフライン」が放送されたのは、20011年11月です。脚本が書かれた時期は、そのだいぶ前でしょうか。

従業員の数が少ない小規模運送会社にとっては資金繰りが困難を極めている時期でした。

社長は誰に、なぜ殺されたのか

ドラマは、男の死体が物流倉庫の一角で発見されるところから始まります。亡くなったのは、帯川運送という従業員5人の小さな運送会社の社長でした。

凶器はカッターナイフでした。被害者が自分の体からカッターを抜いて血だらけの手でグリップを握ったためか、指紋は消えていました。

普通、会社で使うカッターは、歯が折れて荷物に入ってしまうことがないように確認するため、最初の刃の峰の部分を必ず折っているとか。

しかし、凶器に使われたカッターには、その跡がありません。

帯川の会社は多額の借金を背負っていました。その中には、年率1000%を超える金利をしぼりとるヤミ金業者もありました。

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帯川は、なぜ死んだのか。

犯人は誰なのか…。

 2時間スペシャルに詰め込んでもまだ時間が足りないのではないかと感じるほどに、次から次へと衝撃の事実が判明し、あっという間にラストを迎えるのが「ライフライン」です。

ライフラインとボーダーライン

「ライフライン」とは「電気・水道・ガスなど生活・生存に不可欠の基が供給される経路。生活線」を、または「船での救命用ロープ、潜水夫の命綱」のことを指します。

不況の泥沼。運転資金が尽きた小規模運送会社の社長。借り入れ額の増大。長年、尽くしてくれた従業員を路頭に迷わせることはできません。

どうにもならずにヤミ金融に手を出して。

「ライフライン」のちょうど1年前に、【相棒】史上最大の衝撃回と言われる「ボーダーライン」の放送がありました。

「ボーダーライン」では、30代半ばの男性が、突然会社を解雇され、お金が尽き、11か月後にはスーパーなどの試食を食べ歩く姿が描かれました。

その男の、生と死の境界線…ボーダーラインはどこにあったのか。

「ライフライン」では、「ボーダーライン」とは対照的に「雇用する側」が主人公のストーリーになりました。

被害者の、生と死を分ける命綱はどこにあったのか。

「ボーダーライン」の中で、右京さんは言いました。

「だからといって、犯罪で稼いでいい理由にはなりません。犯罪に手を染めてひらける道はありません」

「ライフライン」の帯川社長も、窮地に立たされて、犯罪に加担してしまいました。

分かれ道があったとすれば、この時だったのかもしれません…

「じゃあ、死んじゃえば?」

ヤミ金融に手を出していた帯川ですが、借金を返済する手立てはありませんでした。

「このままじゃ、もう死ぬしかありません」

そう言ってひざまずく帯川に、ヤミ金業者は言い放ちます。

「じゃあ、死んじゃえば?」

帯川の心情が伝わってきます。そこにつけこむのがヤミ金業者です。

債券に苦しむ帯川を、別の債権者への取り立て屋に仕立て上げました。

ギャラは、出来高制で、利息の一部。

元金と利息が消えることは、無い…。

帯川が取り立てを任されたのは、同業者である、別の運送会社でした。

帯川には、自分が取り立てる相手の気持ちが痛いほどわかっています。

それでも、自分の会社で働いてくれている従業員のために、あるいは妻や子供のために、心を鬼にしなければなりません。

取り立ては待ってくれと懇願する相手に、帯川は宣告しました。

「最近は荷物が減る一方だ。それは私がいちばんよく知ってる!…お願いです。トラックを処分してください」

自分自身への宣告にもなってしまいました。

「なんでこんなマネする!そこまでわかっているのになんで苦しめる!同じ業界の人間じゃないか!助けてくれ。助けてくれ、帯川社長!」

「変わるしかないんですよ。取り立てられる側から、取り立てる側に…」

「ふざけるな!」

救いようのない展開です。

ネット通販の恩恵にあやかれず

 どん底だった物流・運送業界は、その後、6年連続で総収入額が増えていきます。

現在では、荷物の量が増えて、ドライバーの数が追いつかないため、サービスの変更をしたり、運送料金を値上げせざるを得ないという、リーマンショック後とは別の課題を抱えています。

課題はありつつも、収益は拡大しています。

今後しばらくは、ネット通販の規模が小さくなることはないだろうと予測されています。倒産件数が減少していることは、小規模運送会社にとっては希望の光となっているはずです。

「あの時」をこらえていたら。命綱が、ぎりぎりのところで切れていなかったら。

現在から見れば、あの時に耐えていたら、と振り返ることができますが、当時は、未来のことなどわかりません。

お金のことばかり考える理由

お金は、人から冷静さを奪います。

とくに、金額の大小を問わず、借り入れ額があると、どうしても焦ってしまいます。

冷静になって考えたら、最善の策をとれたのかもしれないけれど、冷静になれないのが、借金です。アリ地獄です。

ストーリーの途中で、帯川の妻と娘が何度か登場します。

一家の長が抱えた借金は、家族の関係も破壊しかけていました。

妻は夫に「会社を潰して」と頼みました。

しかし夫は、従業員とその家族の行く末を案じて、会社を潰すことができませんでした。

「そうやって潰す機会を逃して。あの人はただ傷を大きくして。そうやって私たちには迷惑ばっかり!」

と叫び出す妻。その様子を見て滅入っていた娘。

ヤミ金から借り入れていたお金を全部返さなくていいと知らされた妻は、輝きを取り戻しました。

神戸くんは、ため息をつきます。

「夫が殺されたっていうのに、お金のことばっかりでしたね」

右京さんは表情を変えません。

「それだけ常にお金に追い詰められていたのでしょう」

 水道・電気・ガス。

そのすべてを得るために払う対価は、お金。

人間は、お金というライフラインに頼って生きています。

お金よりも大切なことがあるというけれど。

お金が無ければ生きていけないのが現実です。

 

心の余裕を買うお金?

 借金は無いほうが心が休まります。

お金はあればあるだけ、心に余裕が広がります。

心の余裕を、ある程度はお金で手に入れることができます。

お金が無い人の大半は、好きでお金が無い暮らしをしているわけではありません。悩みや葛藤を抱えています。

そして人は、お金に冷静さを奪われて、他人と争います。

帯川社長のライフラインは、お金だったのでしょうか。それとも、違うところにあったのでしょうか。じっくり考えてみます。

 

相棒season10第4話「ライフライン」

2011年11月9日放送

脚本・櫻井武晴、監督・近藤俊明

出演・水谷豊、及川光博、林和義ほか

 

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