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俺はヒーローなんかじゃない!【相棒12-17「ヒーロー」感想】2度復讐できず葛藤する青年

この記事ではドラマ【相棒12第17話「ヒーロー」】の感想などを述べています。

どんでん返しの魅力

 この記事を書いているのは2018年1月。ドラマ【相棒】シリーズは、まもなく300話を迎えます。

とにかくバリエーション豊富なストーリー。心の中で好きな作品として「あれ」や「これ」のタイトルが浮かんできます。この「あれ」や「これ」は、【相棒】シリーズを見たことがある人、それぞれで違うことでしょう。

私が好きなストーリー形式のひとつに「最後に意外な犯人が暴かれる」ものが挙げられます。

【相棒】では、最初から犯人がわかっていて、右京さんと知恵比べなどで対決する作品もあれば、物語が後半から終盤に近づく過程で、あっと驚くような人物が犯人だったりする作品もあります。

私は、こういう、どんでん返し的な結末に「やられた!」とビビるのが好きです。

【相棒season12第17話「ヒーロー」】は、最後の最後で「こうきたか!」と思わされる、何度見ても面白い作品です。

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(画像引用・テレビ朝日、東映)

バイトのお金でプレゼント

少年の家は荒れていました。母親は幼い時に出て行き、父親と2人で暮らし。しかし父はギャンブルに明け暮れて。

頑張って高校受験をして合格したけれど、すぐに中退。

少年は、自分の親代わりに親切にしてくれる近所の夫婦に、プレゼントを贈ることを思いつきました。

高校1年生の夏休みに、ゴミ処理場で必死に働いて、稼いだお金は8万円。

老夫婦が行きたがっていた伊豆大島クルーズ旅行の代金が、2人で7万4千円。

プレゼントすることができました。

しかし、数日後に少年がテレビのニュースを見ると、夫婦が乗ったクルーザーが事故に遭い、夫婦は死んでしまいました。

俺はヒーローなんかじゃない

上記のストーリーは、この作品に出てくる杉本竜也という少年から見た、今回の事件の発端です。右京さんとカイトくんの調査によってクルーザーの件が明らかになるのが、ドラマの後半。

物語の冒頭、ビルで火災が発生し、右京さんたちが駆けつけると、竜也が里見麗子という弁護士を救出するところを見かけます。

しかし助けた竜也はすぐに消えてしまいました。

マスコミからは「白昼の救出劇 ヒーローはどこに?」などともてはやされています。竜也に助けられた弁護士の里見麗子は、「ヒーロー」を探して欲しいと右京さんたちにお願いします。

竜也は、里見麗子を殺そうとして近づいていました。

俺はヒーローなんかじゃない。

俺はヒーローなんかじゃない。

竜也は何度も自分に言い聞かせます。

自由自在な金井寛作品

この回の脚本を担当したのは金井寛さんです。金井さんは【相棒11「棋風」】で相棒デビューすると、「ヒーロー」と同じseason12では「殺人の定理」や「エントリーシート」、season13の「許されざる者」など、名作を次々に創作しています。

最新シリーズの【相棒16】では第4話「ケンちゃん」の脚本を担当した金井さん。

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【ドラマ感想文「相棒16-4ケンちゃん」】もし自分の前に純真無垢な青年が現れたら。 - せとさんスポーツ

「殺人の定理」や「ケンちゃん」では、難解な数式が事件解明のカギになる、超絶理系な作品を提示してきました。

しかし、数式の難しさが目くらましになるような形で、人間がそれぞれ抱える葛藤をあぶり出し、見終わった後は超絶文系な作品なんじゃないかと思わせられる大逆転を見せてくれました。

私が金井作品を大好きなのは「この人が犯人だったのか!」と思わせられる「21時45分のびっくり」があるからです。

【相棒】を含む、よく作りこまれた刑事ドラマには「番組開始から30分ほどで捕まる奴は真犯人じゃない」というお約束があります。

【相棒】でいえば21時30分ごろ。

視聴者もよくわかっていて「まだ残り20分以上あるから、ここからストーリーがさらに面白くなるな」とウキウキしてきます。

金井さんは、このあたりの「つかみ」がうまいのです。

いわゆるミスリードというやつ。

「Aが怪しいな」と思わせておいて「え、犯人はBだったのか!」という感じですね。

ただ単に視聴者を犯人当てに誘うわけではなく、そこにヒューマンストーリーを重ねてくるから、金井作品は、真犯人が判明した21時45分あたりを超えて、そこからさらにもう一山あります。このあたりに「相棒すげえ!」と震えを感じます。

右京さんが来ない!

里見麗子の事務所に入り込むことができた竜也は、もう一度、麗子に復讐する機会をうかがいます。

おじさんとおばさんが死んだのは事故じゃなかったんだ。

会社側についたあの弁護士が、事実を隠ぺいさせたんだ。会社側に有利な判決を勝ち取ってヒロイン扱いされやがって。

殺してやる。

殺してやる。

殺してやる。

竜也は麗子を、クルーザー事故の慰霊碑がある岬に連れて行きました。

ここで里見麗子に復讐するんだと。

これはもう、2時間サスペンスドラマの終盤のお約束シーンです。

ここで主役の探偵が間に合って「やめなさい!」と叫んで、なんとか最後の時間は防がれる、あの展開…

あれ?

右京さんが来ない!!

麗子を岬の先端へと追い詰めた竜也の前に現れたのは、ナイフを持った男でした。

麗子を狙ってナイフをふりかざす男を、竜也は身を呈して必死に助けました。何度も何度も危険な目にあいながら。

「やめなさい!」

右京さんが、間に合いました!!

そして明らかになる、殺人事件の真犯人。

 ヒーローは葛藤する

復讐を遂げようとした相手を、2度も救出した少年。

竜也には、何度でも里見麗子を殺すチャンスがありましたが、手にかけることはありませんでした。

竜也の心には大きな葛藤があったはずです。

おじさんとおばさんが死んだこと。自分が里見麗子を殺すこと。復讐の意味。

人の葛藤は、悪い方に振り切れることもあれば、悪い方に振り切れかけた感情を寸前のところで思いとどまらせることもできます。

「そんなことをしてはいけないのではないか」「そんなことをして何の意味があるのか」という、復讐遂行とは逆の葛藤。

少年の葛藤は、自分の凶行を思いとどまらせました。

もし、里見麗子を殺害してしまっていたら、取調室で、右京さんが真犯人に放った一言「あなたは、根本を間違っています」と言われてしまったのは、竜也だったのかもしれません。しかし、そうならない理性が、彼にはありました。

竜也に「2度助けられた」形になった麗子は、彼に言いました。

「誰がどう言おうと、竜也くんは私のヒーローよ」と。

竜也に誘われてあっけなく岬に来た麗子の本意を知って、彼は復讐という行為の愚かさを、身をもって知ることになりました。

金井寛マジック、炸裂です!

 

【相棒12第17話「ヒーロー」】

脚本・金井寛、監督・田村孝蔵

出演・水谷豊、成宮寛貴、岸田タツヤ、松尾れい子、ほか。