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【相棒16第19話「少年A」感想】もし自分が戸籍の無い少年だったら

この記事では【相棒16第19話「少年A」】の感想などについて述べています。

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食べるための毎日

こんなに感動して、前が見えなくなるほど涙があふれて、体が震えたのはいつ以来だろう…すごい話でしたね。興奮冷めやらず。

今回の主人公は「無戸籍者」の少年でした。やさしい顔をしていて、でも決して本心を打ち明けようとせず、右京さんや冠城くんの質問にも嘘をつき続けて。弟を守るために必死でした。裏ではヤミ金業者に脅迫されていました。

いくつも感動ポイントがある話ですが、やはり右京さんたちと少年Aの対話のシーン。

右京さん「君たちがゲームセンターや自習室にいたのは、寒さをしのぐためですね?」

少年A「ヤミ金に手を出していたから金が必要だった。食べるために。この場をのりきることしか考えていなかった。先のことなんて、考えてもつらくなるだけだから」

食べるために。少年が。満足に暮らせるお金を与えてもらえなくて。心をとがらせてしまって。

ヤミ金に手を出して

 少年A…高田創の母親には婚姻歴も出産歴もありませんでした。創には戸籍がありません。そのきょうだいにも。

創は、弟の敦とは父親が違います。母親は、兄弟に満足な生活もさせずに自分は男と遊んでいました。

創と敦は生きるためには学校なんて必要ないから行きませんでした。児童養護施設に入るなんてまっぴらでした。

兄と弟は古いアパートに二人で住んでいます。生活費がありません。

ヤミ金に手を出してしまいました。しかしお金を返せる当てはありません。その場をのりきることしか考えられないけれど、もう逃げ場がなくなってしまい。

創はヤミ金のボスから、人の家に侵入して悪事をはたらいてこいと命令されました。

少年には葛藤がありました。できない。創は新たにお金を借りて、弟を連れて逃亡しようと思いつきました。その場しのぎで。簡単にヤミ金業者たちにバレてしまいました。弟は拉致されて、ボコボコに殴られている。今度こそ命令をやり遂げなければ。

徳永富彦脚本の葛藤

今回の脚本担当は、これまで理系っぽくてちょっとコミカルなストーリーが多い印象があった徳永富彦さん。

【相棒15】あたりから、作風が変わってきました。

息子の死を受け入れられない母親を安達祐実さんが快演した「フェイク」。【相棒16】では、自分は普通じゃないという悩みを抱えた少年が殺人衝動を持ってしまう「倫敦からの客人」。この二つの話ではどちらも主人公が心を失ってしまいました。

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今回は「少年A」。タイトルだけ見ても「コミカルではないな」と想像がつきます。

ただし今回は、主人公は心を失ったわけではありません。現実と全力で戦っていました。

すべてを話した後に右京さんや冠城くん、伊丹刑事などにやさしい言葉をかけられると「ごめんなさい」と「ありがとうございました」を言える少年です。

大人たちに潰されそうで

「もし右京さんと出会っていなかったら」。【相棒】で10代くらいの年齢の人が主役になる回は、たいてい彼らは葛藤にまみれています。

自分より強い立場である大人たちに押しつぶされそうになって、人生に嫌気がさして。心を閉ざしています。

彼らがなぜ心を閉ざしているのか。胸の奥の本当は何を求めているのか。何か言いたいけれど言うことができないなら、それはどんなことなのか。

右京さんはいつでも、少年少女の苦しみに心を重ねてくれます。決して威圧的ではありません。

人は犯した罪を法で裁かれなければならない。右京さんの信念です。その向こうには、人間としての愛情があります。人はみな平等であると。強い者が弱い者を利用してのさばっていたら、毅然と戦います。

「少年A」から解放された

右京さんは少年Aにやさしく語りかけました。

「君は、この世の中には頼れるものなんて何もない、そう思い込んでいるような、暗い表情をしていました。苦しかったでしょう。でも、もう充分です」

最後まで自分の心を完全には開こうとしなかった少年。しかし。

「これからは明日を生きていきませんか」

少年は、初めて、自分の本名を口にしました。

この後。

【相棒】では、すべてが明らかになった後、主人公とその大切な人が警視庁の廊下ですれ違う瞬間に、何度も名シーンが生まれてきました。

今回は、創と敦の兄弟がすれ違います。

「守ってやれなくてごめんな」

「兄ちゃんは悪くない」

少年Aから高田創に戻った少年は、心の奥底から込み上げてくる情動に素直に従って、その場に泣き崩れました。ずっとせき止められていた涙。

右京さんが知りたい真実とは

ネグレクト。 親による育児放棄。「ネグレクトはよくないよねえ」と言うのは簡単。しかし、どこの家庭でどの親子がどんなネグレクトの状態にあるのかを、他人が知ることは困難です。

とくに子供が口をつぐんでいる場合。親への恐怖の事例もあれば、親への愛情から何も言わない子もいます。

高田創は、母親がどんなに遊び倒していても、母親への愛情を失うことはありませんでした。だから、耐えなければならなかった。自分だけじゃない。同じ母親から生まれた弟のためにも。

進学塾の自習室やゲームセンターで時間をつぶす彼らの目に生気はありませんでした。本当は、もっと違う人生を送りたかったはず。言葉にできない葛藤。誰かに話したところで、わかってくれる奴なんていないから。

もし彼らが右京さんと出会っていなかったら。ヤミ金業者に殺されて終わりだったかもしれません。母親を殺害した犯人を知らないままに。

右京さんはよく「僕はただ真実が知りたいだけなのですよ」と言います。それは事件の真実だけでなく、人の心の真実でもあるはずです。

事件は解決したら終わりかもしれない。人の心は、真実を突き止めても、解決することって、あるのかどうか。

杉下右京という模範解答が、教えてくれること。【相棒】は私の「生きるための教科書」です。

 

出演=水谷豊、反町隆史、加藤清史郎ほか

脚本=徳永富彦 監督=橋本一

《次回は↓》

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