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読書感想文=東野圭吾【悪意】もし他人を傷つける衝動に襲われたら

この記事では、東野圭吾さんの小説【悪意】を読んだ感想を、読書感想分の定型である「結→起→承→転→結」を意識して記述しています。内容にネタバレを含みますので注意してください。

結1=まとめ

心にふと悪意が生まれてしまう時があります。悪意を他人にぶつけてしまう前に自制できるかどうか。普段から善いことと悪いことの違いを見極めて、善意を育てておくことが大切だと思いました。

起=この小説についてなど

【悪意】は、1996年に発行された、東野圭吾さんによる長編小説です。

東野さんは、1999年に【秘密】で第52回日本推理作家協会賞、2006年に【容疑者Xの献身】で第134回直木賞と第6回本格ミステリ大賞を受賞するなど、日本を代表する作家です。

東野さんの小説を【放課後】→【名探偵の掟】の順で読んで、講談社文庫版の【名探偵の掟】に収録されている「解説」を読んだことから、私は【悪意】にたどり着きました。

「デビュー作の『放課後』でも特徴的な動機を描いていた東野圭吾だが、一九九六年には、動機という問題を徹底的に追究した『悪意』という作品を発表している。犯人は誰かという興味ではなく、その人物が何故罪を犯したのかという問題が、長篇小説全体を通して深く深く掘り下げられていくのである。」

私は、トリックや真犯人など明快なひとつの解答を推理するよりも、人の心という、答えがわからないものを想像していく作業が好きです。

なぜ人を殺したいほど憎悪して、実際に殺してしまったのか。【放課後】では、登場人物の高校生たちの心情の変化を読み取ることに集中しました。

【悪意】については、作品のテーマが動機であると、読む前に知識を得ています。殺人事件を起こすほどの動機とはどんなものだったのか、興味深く読みました。

承=あらすじなど

物語は児童文学作家・野々口修の手記の形で始まります。

野々口は中学時代の同級生で人気作家の日高邦彦を殺害したとして逮捕されました。

犯行を認める野々口ですが、動機だけは語りません。なぜ子供の頃からの親友であり、仕事の面でも世話になっている日高を殺さねばならなかったのか。

加賀刑事の捜査で、野々口の部屋から未発表原稿や、日高の前妻の写真が見つかります。

日高の作品は盗作だったのか。日高の前妻と野々口は不倫関係にあったのか。

加賀刑事は執念の捜査で殺人事件の動機にせまります。

浮かび上がってきたのは、日高と野々口の中学時代のいじめの話でした。

転=考えたこと

いじめはよくない、ということは、たぶん、誰でも理解しています。

しかし、いじめはなくなりません。

なぜなのでしょうか。

物語では、日高が執筆したとされる『禁猟地』という小説の中で、実体験に近いドキュメント形式で中学時代のいじめが語られています。

いじめを受けた少年から見ると、『ある日突然悪霊の封印をはがしてしまったかのように』いじめが始まりました。

『彼が恐ろしいと思ったのは、暴力そのものではなく、自分を嫌う者たちが発する負のエネルギーだった。彼は今まで、世の中にこれほどの悪意が存在するとは、想像もしていなかったのだ』

他人に暴力を振るうことにためらいのない人物。見て見ぬ振りをする教師。いじめられる側は、あまりの理不尽さに、ただ途方にくれるしかない…

悪意は突然生まれてきて、抑制がきかない時に、他人を傷つけます。

殺人も、その行為がよくないことは、誰でも理解しています。

しかし、人が殺人事件を起こしてしまうのは、なぜなのでしょうか。

【悪意】の犯人による動機は、大きくわけて2つありました。

ひとつめは、犯人にはどうしても隠しておきたい過去があったこと。

もうひとつは、被害者に対する嫉妬や劣等感です。

この2つを暴かれたくないために、犯人は大がかりな「嘘の動機」を作り上げました。

私にも、隠しておきたい秘密があります。その秘密を他人に知られてしまったり、公にさらされてしまったりしたら、と想像すると脅威を感じます。しかし、秘密を知られても、その相手を殺害する行為まではしないでしょう。

そこに、越えてはいけない線があるからです。犯人は、線を越えてしまいました。

線を越える後押しをしたのが「悪意」なのかもしれません。

犯人は被害者に嫉妬や劣等感を抱き、憎悪に発展しました。被害者を殺害するだけでなく、被害者の人生そのものを壊して、悪人に仕立てました。

そのために、何年もかけて大がかりなトリックを仕掛けました。

もはや悪意は自分でも止めようがなかったのでしょう。真相が明らかになるほど、やるせなさが募ります。

悪意 (講談社文庫)

悪意 (講談社文庫)

 

結=まとめ

悪意は突然生まれてきます。ならば、他人を傷つけてしまう前に処理しなければいけません。

自分の意識に湧いてきた悪意に気がつけるかどうか。そこに分かれ目がありそうです。

悪意の対義になるのは、善意です。

普段から善意を育てておくためには、悪意が発する負のエネルギーについて知っておく必要があります。

もしいじめが起きていたら。自分が被害者、または加害者、あるいは傍観者だったら。

そこにどんな悪意が働いていて、善意はどう生かされるべきなのか。

善意と悪意をめぐる教材は、身の回りにたくさんあります。