この記事では、2018年10月24日に放送されたテレビドラマ【相棒17第2話「ボディ〜二重の罠」】の感想などを記述しています。
素直に「面白い!」
2話連続ものの後編となった今回。第1話と合わせて、最近の初回スペシャルと比較すると格段に面白い内容でした。
冠城亘(反町隆史さん)の初登場となった【相棒14-1「フランケンシュタインの告白」】や前シリーズの【相棒16-1検察捜査】など、堅苦しくて重い話が多かっただけに、コミカルな内容を含んだ「ボディ」とその続編「ボディ〜二重の罠」は気軽に見ることができました。
とくに、鬼束鋼太郎役を演じた利重剛さんのダメ人間演技が秀逸です。
犯人が明かされているパターンでは、右京さん(水谷豊さん)たちに追いつめられる犯人役の力量が問われます。利重さん、その妻で国家公安委員を務める大学教授の三上冨貴江役のとよた真帆さん、殺害された鬼束鐵太郎の40歳以上離れた妻である祥役の谷村美月さんのトリオは笑ってしまうほど滑稽で、殺人事件の話なのに喜劇を見ているようでした。
前編を振り返ると
第1話は、三上冨貴江の自宅で、鬼束学園の理事長である鬼束鐵太郎が殺害される事件が発生するところから始まりました。
副理事長の鋼太郎が、冨貴江のために父の鐵太郎を殺したというのです。鐵太郎は探偵を雇って、冨貴江が若い男と密会していた弱みを握り、冨貴江を家から追い出そうとしていました。
冨貴江は自分の社会的立場を守るために、殺人事件の隠ぺい工作に加担しました。事情を知る祥は警察に失踪届を出し、鐵太郎が自ら行方不明になったように仕組みます。
鐵太郎の失踪事件に興味を持った特命係の2人は、鐵太郎がすでに殺害されていると確信を持ちます。
鬼束家のコレクションルームの床下に鐵太郎の死体が隠されていると確信を持った右京さんは、クビをかけて令状をとり、警察はコレクションルームを取り壊しました。
しかし、死体が出てこない!
右京さんの推理がハズレた…
右京さん、クビ?
というところで第1話が終わり、第2話に続きます。
動機は「色、欲、金」
第2話で、右京さんは「残務整理」という名目で捜査を続行します。
特命係の2人は鬼束家の面々に心理的な圧力をかけます。
冨貴江は「家を壊されたのは不愉快だが、それでも国家公安委員として警察を信用している」とコメントし、警察の動きを封じます。
それでも右京さんたちは、鋼太郎が捨てられずに持っている鐵太郎の携帯電話を足がかりに、鋼太郎たちに立ち向かっていきます。
一般的に「事件の動機の三原則」は「色、欲、金」と言われています。
祥にゾッコンの鋼太郎は「色」。
地位にしがみつく冨貴江は「欲」。
亡き夫の遺産を狙う祥は「金」。
三者三様の動機がありました。右京さんによって「鐵太郎を殺害した真犯人」の存在もきっちり明らかになります。
【相棒4-1「閣下の城」】では、閣下と呼ばれる北条晴臣(長門裕之さん)が、閣下の財産目当てで近づいた郷内繭子(高橋かおりさん)の悪魔の色気に血迷わせられて犯罪者に堕ちる姿がコミカルに描かれました。今回は、一見は地味な祥の魅力に取り憑かれた鋼太郎の「惚れた弱み」が事件解明のカギになりました。
「ボディ」と「ボディ〜二重の罠」は、特命係の2人の露出を控えめにして、犯人側の心理戦を前面に出す構成になっています。場面がスピーディーに切り替わり、気がつけば放送時間が大詰めを迎えていました。
回想シーンでカイトくん
第1話と第2話では、甲斐嶺秋(石坂浩二さん)が息子を回想する形で、右京さんの3代目の相棒である甲斐享(成宮寛貴さん)が登場しました。
カイトくんの初登場となった【相棒11-1「聖域」】では、関係が修復不可能と思われるほど反目し合っていた親子が、カイトくんがダークナイト堕ちして退場した【相棒13最終話「ダークナイト」】のラストで、父と子が歩み寄る場面がありました。そのきっかけとなったのは、カイトくんとカノジョの笛吹悦子(真飛聖さん)の間に新しい命が誕生したことです。
甲斐パパは「ボディ〜二重の罠」で、冨貴江と会話しつつ、自分とカイトくんの関係を振り返ります。
当初は「失敗する奴はそこまで。それで終わり」。カイトくんが犯罪者として逮捕された件を踏まえた現在は、冨貴江に「再チャレンジすることを勧めたいと思う」。
父親の揺れ動く心模様が描かれました。
「ダークナイト」のラストで、カイトくんは父親に対して「年取ったね、親父。ビンタ、昔のほうが痛かった気がする」と語りました。父と子に流れる歳月の冷酷さが郷愁を誘ったシーンです。
「わかりやすさ」の安心感
【相棒】シリーズは2000年にスタートしました。当時の視聴者が20歳だったら現在は40歳近くに、当時40歳だったら60歳近くになっています。60歳だった人は、もうすぐ80代を迎えます。
2代目相棒の神戸尊(及川光博さん)が活躍した【相棒8】から【相棒10】までの頃は、複雑なトリックや構成が人気を博しました。しかし、視聴者層の高齢化に伴い、1話ごとの内容に「わかりやすさ」が求められる時期に来ています。
【相棒16】や、【相棒17】の第1話と第2話は「わかりやすさ」という点で、視聴者にやさしいストーリーになっている感があります。
「ボディ」と「ボディ〜二重の罠」では、犯人たちの滑稽さや登場人物の心境の変化が、ストレートに伝わってきました。
「わかりやすさ」は、【相棒16】や【相棒17】から初めてこのドラマに接する視聴者の参入障壁を低くします。新たなファンの獲得にもつながります。
アンパンマンや水戸黄門に匹敵する、勧善懲悪のわかりやすさ。
複雑な構成を好むファンには、やや物足りないかもしれないけれど、時代とともに変化する【相棒】の、わかりやすさという安心感は、17シーズン目だからこその、新しい魅力です。
水曜夜9時の【相棒】を受けて、その直後や翌日の学校、職場で「面白かったね!」と感想交流する喜び。
第3話が待ち遠しくなりました。
【相棒17第2話「ボディ〜二重の罠】
2018年10月24日放送
脚本=輿水泰弘
監督=橋本一
《次回は↓》
【相棒17第3話「辞書の神様」感想】職人たちの哀しい物語を描く名作だ! - せとさんスポーツ
《前回は↓》