【相棒】は、テレビ朝日・東映の制作で放送されている21世紀を代表するテレビドラマシリーズです。
主人公は、水谷豊さん演じる杉下右京警部とその相棒。現在の相棒は反町隆史さんが演じる冠城亘(かぶらぎわたる)です。たった2人の警視庁特命係が難事件を解決します。
2019年10月からは18シーズン目がスタート。冠城亘は【相棒14】での登場以来、5シーズン目となりました。
この記事では2020年の元日2時間スペシャルとして放送された【相棒18第11話「ブラックアウト」】のネタバレを含む感想などを記述しています。
主な出演者・スタッフ
【相棒18第11話「ブラックアウト」】
2020年1月1日放送
出演
杉下右京=水谷豊=警視庁特命係係長。警部。
冠城亘=反町隆史=警視庁特命係。巡査。
伊丹憲一=川原和久=警視庁刑事部捜査一課。巡査部長。
芹沢慶二=山中崇史=警視庁刑事部捜査一課。巡査部長。
角田六郎=山西惇=警視庁組織犯罪対策部組織犯罪対策五課長。警視。
青木年男=浅利陽介=警視庁サイバーセキュリティ対策本部特別捜査官。
内村完爾=片桐竜次=警視庁刑事部長。警視長。
中園照生=小野了=警視庁刑事部参事官。警視正。
☆
雨宮紗耶香=瀧本美織
蓮見誠司=浅香航大
入江良文=河相我聞
溝口正吾=螢雪次朗
真鍋克彦=川口力哉
佐分利俊明=迫田孝也
宇津井将史=瀬口寛之
宇津井亜紀=桜木梨奈
来島篤郎=棚橋ナッツ
安藤浩介=松澤傑
富樫茂雄=樋浦勉
田村功=崔哲浩
木村修一=諏訪太朗
☆
蓮見恭一郎=長谷川初範
衣笠藤治=杉本哲太
甲斐峯秋=石坂浩二
ほか
スタッフ
エグゼクティブプロデューサー=桑田潔
チーフプロデューサー=佐藤涼一
プロデューサー=髙野渉、西平敦郎、土田真道
脚本=神森万里江
音楽=池頼広
監督=橋本一
ほか
どんな話?
年の瀬。右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は、山奥のゴルフコースで開かれる警視庁主催の親睦ゴルフコンペに、“準備係”として駆り出される。コンペには、副総監の衣笠(杉本哲太)をはじめとする警視庁上層部のほか、警察庁OBの蓮見恭一郎(長谷川初範)や、その息子で組織犯罪対策3課の係長・蓮見誠司(浅香航大)らが参加していた。コンペ終了後、参加者たちがそれぞれ帰路につこうとした矢先、ゴルフ場の地下駐車場で大爆発が発生! 出入り口が完全に塞がり、居合わせた人間が、地下空間に閉じ込められてしまう。さらに、爆発に巻き込まれたと思われた“被害者”の一人が突如、持っていた拳銃を発砲!! 男は、暴力団の構成員で、その場にいた人々を人質に、「収監されている会長と7人の組員を釈放しろ!」という要求を突きつけてくる。
人質になったのは、右京と恭一郎のほか、恭一郎の秘書を務める雨宮紗耶香(瀧本美織)ら計8人。男は、この時点ですでに、指示に従わなかった人質の一人を射殺しており、状況は切迫していた。いっぽう、地上では、亘をはじめ警視庁の面々が、人質救出に向けて動き始めていた。そんな中、地下に閉じ込められている人数と人質の人数が合わないという、不可解な状況が判明。人質の中に犯人の仲間がいるのではないかという疑惑が浮上してくる。そうこうするうち、右京は今回の一件と、5年前に起きたある事故の符合に気づき…!?(引用=テレビ朝日)
その後どうなった?(完全ネタバレ注意)
暴力団構成員の溝口に人質にとられたのは、右京さん、内村刑事部長、蓮見恭一郎、雨宮紗耶香、奥村悟、来島篤郎、真鍋克彦、宇津井将史、宇津井亜紀の9人。
溝口は「8人の人質をとった」とメッセージしてくる。人質の数が合わない。この中に1人、共犯者がいる!
溝口は要求がなかなか飲まれずイライラし、恭一郎に銃口を向けて発砲するが、右京さんが恭一郎をかばって左腕に銃弾を受けてしまう。
収監されている暴力団会長から電話で「もうそっとしといてくれねえか。今まで世話になったな。ありがとな」とやさしく諭された溝口は呆然とする。
…
右京さんたちが地下に閉じ込められている状況は、5年前に恭一郎が遭遇したトンネル落盤事故と酷似していた。
その事故では、喘息だと嘘をつく恭一郎をレスキュー隊員の真鍋が優先的に救出し、その直後に爆発が起きてしまった。
来島と宇津井夫妻は5年前の事故で家族を失っていた。真鍋と来島、宇津井夫妻の4人は共犯となって、恭一郎への復讐のために今回の爆発を決行した。
しかし、溝口という邪魔が入ってしまい、真鍋たちの想定通りに事は運ばなかった。
溝口の共犯は、溝口に撃たれて死んだと思われていた奥村だった。奥村は溝口を含む全員を縛って高笑いする。
今回の爆発事件を裏で操っていたのは奥村…しかし右京さんが咄嗟の一撃で奥村を倒す。
冠城くんたちの救出の手が入り、右京さんたちはようやく地下から脱出した。
地下の様子は真鍋が隠し撮りしていて、ネット動画で配信されて、真鍋たちの狙いどおりに本性を現した恭一郎の尊大な態度が炎上を呼んだ。
奥村の姿が消えた。
奥村は真鍋たち4人と溝口に、別々に今回の事件を仕掛けることを持ちかけていた。
真鍋たちに5年前の事故の復讐をよびかけて事件を起こす一方で、奥村の本当の狙いがバレないように、溝口をかき回し役に仕立てたのだ。
奥村の本名は入江で、スイス銀行を通じて本当の目的である10億円の大金を手に入れた。入江の海外逃亡の可能性が高まる。
入江に10億円を渡したのは蓮見警備保障の佐分利だった。佐分利は社長の命を守るためにお金を渡したというが、本当の目的は3年前に起きた事件の隠蔽だった。
3年前、制服巡査だった誠司は逃げる強盗犯を追いかけて射殺して賞賛されたが、死んだのはたまたま通りがかった安藤という男で、完全な誤射だった。
恭一郎は息子の失態を隠すために安藤を強盗犯に仕立てあげた。
安藤の恋人は雨宮紗耶香だった。紗耶香は安藤の死の真相を暴くために蓮見警備保障に入社し、誠司の恋人になった。
紗耶香は入江と共謀して、今回の大掛かりな事件を仕組んだのだった。
感想など(ネタバレ)
雨宮紗耶香の復讐は、成功したのでしょうか。それとも。どっちだったんだろうか。ボーダーライン。
恋人を殺した男の恋人に
「ブラックアウト」という言葉には、複数の意味があります。「停電、灯火管制」。「一時的な記憶・意識の喪失」。「場面の暗転」。「報道官生、放送中止」。(三省堂 大辞林より)
「真っ暗な世界になる」という表現でまとまるでしょうか。
雨宮紗耶香は、3年前のある日にブラックアウトを経験しました。
安藤との出会いは、雨の日でした。コンクリートの壁に美しいガーベラの花を描いていた彼に惚れました。
その恋人が、突然、死んでしまいました。宝石を盗んで逃げていて、警察官に射殺されたというのです。
おかしい。絶対におかしい。紗耶香は、彼を射殺した蓮見誠司という警察官が隠し事をしていると確信していました。
どうして殺したのか。どうやって殺したのか。
紗耶香は、すぐに警察官の父親が社長を務める蓮見警備保障に入社しました。蓮見誠司に近づいて、交際を始めました。
彼を殺した好きでもない男と付き合って、復讐を実行することにしました。
復讐というのは、そのために3年間も嫌なことを耐え忍べるものなのでしょうか。
紗耶香と誠司がどこまでの関係にあったのかはわかりませんが、相手は警察庁OBの御曹司なので、浅い付き合いではないでしょう。
紗耶香は、誠司が真相を話すように仕向けるために、大がかりな犯罪計画を立てました。
執念がすごすぎます。
夜の遊園地で、誠司に銃口を向けて「答えなさい!」と声を張り上げる紗耶香の姿は、右京さんがオーバーラップしました。
誠司はすべて白状しました。
右京さんは拳銃を構える紗耶香に「もう充分ではありませんか」と諭します。これ以上、罪を重ねないように。
神森万里江脚本の「復讐」
「ブラックアウト」の脚本は神森万里江さんが担当しています。
神森さんは【相棒18】では「少女」と2話連続スペシャルの「檻の中」の脚本も書いています。
「少女」では、恋人を殺された男性と、妹は母親に殺されたと思っている小学生の女の子の復讐心が描かれました。
「檻の中」には、外国でテロに遭った妻の復讐を実行しようとする男が登場します。
神森作品の「復讐」はどれも強烈です。
「少女」に出てきた男は、復讐相手を刺した後に、復讐なんかしても気持ちは晴れないこと、人を殺しても後悔と虚しさしか残らないことを実感していました。
復讐したい気持ちは痛いほど伝わってくるけれど、それを実行してしまってはいけないよ、という「線引き」を、神森さんが紡ぐストーリーが教えてくれます。
紗耶香は、線引きのボーダーラインにいました。
恋人の死の真相を知るために、3年間も復讐心を抱えてきました。でも、誠司を撃ち殺してしまうほど、悪い奴ではありません。
右京さんがやさしく語りかけた「もうやめましょう」。言ってほしかったのかな。誰かに止めて欲しかったのかな。
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隠し続ける葛藤と不安
蓮見誠司は、3年前に通りすがりの青年を、強盗犯と間違えて射殺してしまいました。
その事実は、父親によってもみ消されました。誠司にとっては、隠しておかなければならない事実です。
いつかバレてしまうのではないかとビクビクしながら生活していたのかもしれません。
不安に苛まれながらも、誰にも言えない日々です。苦しかったでしょう。
ひょっとしたら、誠司も「もうやめましょう」と言ってほしかったのかもしれません。誰かに止めてほしかったんじゃないかな。
真相を話して楽になりたかったんじゃないかな。誠司の、警察官としての心を信じます。
嘘つきで偉そうな悪人
悪の総本山は蓮見恭一郎でした。
5年前のトンネル落盤事故では、ぜんそくの発作が出たふりをして真っ先に救助されました。
警察庁OBの「偉い人」として、傲慢な振る舞いをしてきました。
ゴルフ場の地下に閉じ込められた際にも、自分が真っ先に助かろうとしました。その様子が録画され動画配信されても、恭一郎はとくにダメージを受けなかったようです。
息子の過去が暴露されないように、10億円を用意して、脅迫してきた人間に簡単に渡しました。
地位と名誉を守るためなら、どんな手段を使っても構わないようです。
【相棒】で「復讐」が描かれる時、復讐の対象となる悪人はわかりやすく提示されます。「こんなに悪い奴だったら復讐したくなる気持ちもわかる」という流れになります。蓮見恭一郎は、わかりやすい悪人です。
だからといって、彼に復讐を遂げてよいわけではありません。【相棒】が他の刑事ドラマと違う点は、悪人がきっちりと裁かれるとは限らない点です。
右京さんは紗耶香に「真実を知りたかったんですよね?」と問いました。紗耶香の意図は、蓮見親子に復讐を遂げることではなく、真実を知ることでした。
ラストのシーンでは、ゴルフ場地下の爆破事件を起こした人たちと、紗耶香が警視庁の廊下ですれ違いました。
本当に裁かれるべきなのは?
蓮見恭一郎は、その後どうなったのでしょうか?
右京、撃たれる!
真実を知りたい紗耶香と、お金が欲しい入江が組んで起こした事件。
前半、ゴルフ場の地下で、右京さんは恭一郎をかばって、溝口に左腕を撃たれてしまいました。
右京さんは2002年12月放送の【相棒1「右京撃たれる 特命係15年目の真実」】で、腹部に銃弾を受けて重体になった経験があります。
今回は、紗耶香に患部を縛ってもらっただけで、ケロッとしていました。直後に入江に体当たりして窮地をくぐり抜けるなど、無双状態でした。このあたりは元日スペシャルらしいご愛嬌でしょうか。
「ブラックアウト」では、ゴルフ場の地下が爆破された事件とその後の顛末で、死者が出ませんでした。
5年前の事故と3年前の誤射の際に死者が出たことから、事件が引き起こされましたが、新たな犠牲者は出ませんでした。
爆破は一歩間違えたら死者が出ていたかもしれない危険な行為ですが、誰も他人の命を奪おうとはしていなかったことに救いがあります。
紗耶香や爆破犯たちが抱える「ブラックアウト」の状態は、少しずつ復旧していくことでしょう。
声に出して読みたい右京さんのセリフ
「紗耶香さん。あなたは安藤さんがなぜ殺されたのか、その真実が知りたかったんですよね。それならもう充分じゃありませんか。これ以上、罪を重ねてはいけません。いえ、それ以前に、あなたはそこまで悪いことのできる人じゃありませんよ。あなたの目を見ればわかります。もう…やめましょう」
右京さんは、目を見ればわかるらしい!
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