東野圭吾さんによる小説【危険なビーナス】の読書感想文を述べています。この作品は連続ドラマ化され、2020年10月からTBSテレビ系列で全国放送されます。
学校の夏休み前などに習う読書感想文の定型である「結→起・承・転・結」を意識して書きました。
記事の最後にネタバレがあるので、結末を知りたくない人は注意してください。
- 結1=感想文の結論のまとめを冒頭に
- 起=【危険なビーナス】とは(説明)
- 登場人物
- 承=あらすじなど
- 転=危険だとわかっていても好きすぎて
- 結=暴走しそうになったら立ち止まる
- 結転=もうひとつの「危険なビーナス」
- ここから下は読まないことをおすすめ…結末ネタバレを3つ
結1=感想文の結論のまとめを冒頭に
もし危険なビーナスに出会ってしまった時に、その魔性に絡めとられないようにするには、相手の心理を読んで冷静に行動することが大切だなと感じました。
(画像=講談社文庫版)
起=【危険なビーナス】とは(説明)
【危険なビーナス】は、2016年8月に講談社から刊行された、東野圭吾さんによる長編小説です。
2019年に文庫化された際に巻かれた帯には「恋愛ミステリー」と記載されています。
東野さんは、1985年に【放課後】で第31回江戸川乱歩賞を受賞して以来、1999年に【秘密】で第52回日本推理作家協会賞、2006年に【容疑者Xの献身】で第134回直木賞と第6回本格ミステリ大賞を受賞するなど、日本を代表する作家です。
ドラマや映画などで映像化される作品が多く、【危険なビーナス】は2020年10月から連続ドラマとして、妻夫木聡さんと吉高由里子さんの主演で放送されます。
この感想文を作成している時点ではまだ放送は始まっていませんが、発表されているキャストの容姿を登場人物に当てはめて読むことで、小説の中の世界をイメージしやすくなりました。
登場人物
【危険なビーナス】は、遺産相続に絡む登場人物が多いので、整理しておきます。カッコ内は、テレビドラマにおけるキャストさんの名前です。
手島伯朗(妻夫木聡)=主人公の獣医。
八神楓(吉高由里子)=明人の妻。
八神明人(染谷将太)=伯朗の弟。
八神禎子(斉藤由貴)=伯朗の母。
兼岩順子(坂井真紀)=禎子の妹。
兼岩憲三(小日向文世)=順子の夫。
蔭山元実(中村アン)=動物看護師。
八神康之介(栗田芳宏)=八神家の前当主。
八神康治(栗原英雄)=康之介の長男。八神家の現当主。
八神波恵(戸田恵子)=康之介の長女。康治の実妹。
八神祥子(安蘭けい)=康治と波恵の異母妹。
八神佐代(麻生祐未)=康之介の養子
八神勇磨(ディーン・フジオカ)=康之介の養子
承=あらすじなど
伯朗は、幼い時に父親の一清と死別しました。母の禎子は資産家の八神康治と結婚し、弟の明人が生まれます。
伯朗は八神とは肌が合わず、母が亡くなってからは八神家と距離を置いていました。
獣医となった伯朗の前に、弟の妻を名乗る女性・楓が現れます。楓は、明人が失踪したので一緒に捜してほしいと伯朗に頼みます。
明人は八神家の莫大な遺産の相続権を持っていて、伯朗と楓は八神家に潜入して明人の行方を追いますが、伯朗は次第に弟の妻である楓に恋をしてしまいます。
ストーリーを追いかけながら気になるのは、
☆楓の正体は何者なのか?
☆明人はどうなってしまったのか?
☆禎子を殺害した犯人は誰なのか?
の3点に集約されます。
これらの謎を伯朗の視点で追っていきます。
伯朗が危険なビーナスに一途になり現実を見失っていく流れにモヤモヤさせられつつも、先の読めない展開が続きます。
結末でビーナスの意外な正体が判明すると、つい「やられた!」とほほ笑んでしまいました。
転=危険だとわかっていても好きすぎて
弟の行方や殺人事件の犯人についても気になるところですが、核になるのは題名にもなっている「危険なビーナス」が何者なのかという点です。
「ビーナスとは」は、ローマ神話の美と愛の女神です。この作品では八神楓が女神に該当します。
伯朗は楓に一目惚れしたわけではありません。2人で弟を捜索するうちに、だんだんと惹かれていきます。
看護師の元実に「彼女には気をつけたほうがいいですよ」と忠告された時には、すでに手遅れだったようです。
楓がほかの男と一緒にいると知ると気になって仕方なく、スマートフォンを手放せません。診療にも集中できなくなってしまいます。
最後のほうは、弟を捜すために一緒にいるというよりも、楓と一緒にいるために弟を捜しています。
弟の妻を好きになってしまう後ろめたさを感じつつも、止められません。
楓が自分の部屋の家賃を知らないことや明人の嫌いな食べ物を知らないことなどから、弟の妻であるというのは嘘だと読者が推測できるようになっても、伯朗は楓に問いただすことはせず、愛の告白へと向かいます。
これでは相手にいいように利用されてしまいます。
惚れた相手に盲目になる伯朗の姿を追っていると「おいおい、冷静になれ」と感じ、その行動に興ざめしてしまう部分もあります。自分だったら、そんなに引きずり込まれないよ、と。
しかし、実際に自分の目の前に恋愛対象として完ぺきに近い人物が現れて、心を奪われてしまったら冷静でいられるだろうか、と考えると、ちょっと怖くなります。
結=暴走しそうになったら立ち止まる
好き。でも好きになってはいけない相手。
片思いの恋は人を不安にします。相手に謎が多いほど、気になってしまいます。
もし危険なビーナスに出会ってしまったら。
その魔性に絡めとられないようにするには、まず相手の魔性に気づくことが大切です。
気づけないからハマってしまうのかもしれません。しかし、予防を意識すれば、どうにかなるかもしれません。
恋愛感情に限らず、他人に利用されないようにするためには、伯朗のように妄想を暴走させずに、いったん立ち止まる勇気を持つこと。
相手の心理を読んで冷静に行動することが肝要だなと感じました。
って、文章ではいくらでも書けるけれど、リアルでは簡単に立ち止まれないのが人間の性でもあるわけで…
危険なビーナスは他者という実体だけでなく、自分の思考の偏りによっても出現することを意識して、警戒しておきます。
結転=もうひとつの「危険なビーナス」
この作品には楓のほかに、もうひとつの「ビーナス」が存在します。それは「数学」です。
数学において最も重要な未解決問題といわれる「リーマン予想」というものがあります。
あまりにも難解なため、取り組んだ数学者の多くが精神を病んでしまうほどなのだそうです。
数学愛好者の中には、病んでしまうほどと知っていても、素数とは何かという謎を解いてリーマン予想に決着をつけようとチャレンジする人がいます。
人を虜にするという意味では、数学も「危険なビーナス」と呼べそうです。
この物語では、数学の魅力に取り憑かれた人物が殺人事件の犯人になってしまいます。
何事も深入りは禁物なのかもしれません。
これから新しい出会いがあるなら「危険なビーナス」よりも「彼女には気をつけたほうがいいですよ」と忠告してくれる蔭山元実のような存在をリクエストします。
読書感想文終わり。
《ここから下は未読の方は見ないほうがいいですよ》
ここから下は読まないことをおすすめ…結末ネタバレを3つ
自分の備忘録としてネタバラシを記しておきます。どうしても結末を知ってしまいたい人だけ読んでね。結末を知りたくない人は読んじゃダメー!
☆インターネット上で八神明人を拉致、監禁しようとしている人物がいることを知った警察は、犯人を突き止めるために潜入捜査を選択し、女性警察官の楓を明人の妻に仕立てて潜り込ませていた。
☆明人は母の死の再捜査を交換条件にして警察の潜入捜査に協力し、身を隠していた。
☆禎子を殺害した犯人は兼岩憲三だった。憲三は、禎子の夫が遺した「寛恕(かんじょ)の網」という、数学最大の謎が解けるかもしれない絵を捜していて、禎子の家に盗み目的で侵入したところを禎子に見つかり、口封じのために殺した。
ダメって言ったのに誘惑を断ち切れずに読んでしまったあなたは、現実世界で危険なビーナスの存在に注意したほうがいいかもしれません。笑。