2000年から放送されているドラマ【相棒】の新シーズン【相棒20】が、2021年秋から放送されています。
水谷豊さん扮する杉下右京と反町隆史さんが演じる冠城亘(かぶらぎわたる)が、警視庁のたった2人の特命係として事件を解決に導きます。
2021年10月13日放送の【相棒20第1話「復活~口封じの死」】はどんな話なのでしょうか。
今回のゲスト登場人物たちは過去回でどう動いたのか、超ざっくり紹介した後に、第1話のストーリー(ネタバレ)と感想などを記述します。
(この記事の画像はテレビ朝日から引用)
超ざっくり!【相棒20】第1話につながる過去のストーリーはどんな流れだった?
【相棒20第1話「復活」】では、【相棒18最終回】で初登場となった内閣官房長官・鶴田翁助(つるた・おうすけ)と特命係の対決が過熱します。
鶴田、内閣情報調査室の栗橋東一郎や柾庸子、IT長者の加西周明、元弁護士の中郷都々子、そして17年ぶりに復活する元・内閣官房長官の朱雀武比古が、これまでどのようにストーリーに絡んできたのか、振り返ります。
【相棒3第1話〜第3話「双頭の悪魔」】
2004年10月放送
朱雀武比古(すざくたけひこ=本田博太郎さん)が初登場
首相補佐官である沢村久重の変死事件。密室状態の自宅で遺体が発見されたことから、自殺で処理されそうになります。
しかし殺人事件として捜査を開始した杉下右京によって、真犯人の一人が内閣官房長官の朱雀武比古であることが暴かれました。
【相棒20】公式サイトによる第1話のストーリー導入部紹介では、朱雀が長期刑を受け、3年前に仮出所したことか明らかにされています。
【相棒18最終話「ディープフェイク・エクスペリメント」】
2020年3月放送
鶴田翁助(つるたおうすけ=相島一之さん)、栗橋東一郎(くりはしとういちろう=陰山泰さん)、柾庸子(まさきようこ=遠山景織子さん)が初登場
元東亜ダイナミクス社長の桂川宗佐が、自宅寝室で殺害される事件が発生。
殺害犯である研究者・鬼石美奈代のディープフェイク技術を利用していた内閣官房長官の鶴田や内閣情報調査室の栗橋、庸子らは美奈代が犯人であると知られると具合が悪いため、美奈代を遠い場所にかくまっていました。
美奈代は逮捕されたものの、庸子は事情聴取されただけで釈放されます。内村刑事部長いわく「触らぬ神に祟りなし」。右京さんの追及は、悪の本丸までは届きませんでした。
鶴田はについては、右京さんが追いつめた朱雀を師と仰いでいること、赤坂の芸者時代の小出茉梨(こいでまり、こてまり=森口瑤子さん)を贔屓にしていたことなどが明かされています。
【相棒19第1話〜第2話「プレゼンス」】
2020年10月放送
加西周明(かさいしゅうめい=石丸幹二さん)が初登場
白バイ隊員だった出雲麗音(いずもれおん=篠原ゆき子さん)を朱音静が襲撃した事件や、万津幸矢がビルの壁をよじ登って転落死した事件を主導したのは、IT長者でVR国家「ネオ・ジパング」のボスである加西周明でした。
加西は連行されるも、衣笠藤治(きぬがさとうじ=杉本哲太さん)副総監の鶴の一声によって、逮捕されずに釈放されます。
甲斐峯秋(かいみねあき=石坂浩二さん)によると、かなり上の人間の意向が働いたとか。警視総監や警察庁長官より、もっと上の…
【相棒19第19話〜最終話「暗殺者への招待」】
2021年3月放送
中郷都々子(なかざとつづこ=織田梨沙さん)が初登場
衣笠副総監に加西不逮捕の圧力をかけたのは鶴田でした。
弁護士の中郷都々子は事務所の代表である三門安吾の指示を受け、加西周明が罪を逃れるために用意した大金の横領に関与。しかし特命係に悪事を暴かれて、都々子は事務所に辞表を出します。
その後、加西は内調の柾庸子が雇った殺し屋に殺害されてしまいました。鶴田が加西逮捕を妨害したのは、加西を守るためではなく、抹殺するためです。
加西とつながりのある鶴田にとって、自分の思いつきで何でも言ってのける加西は、すでにコントロールのできない邪魔な存在になっていたようです。
鶴田の愛人とみられる庸子は、今回の件は自分の一存だと供述します。
鶴田の部屋で亘は「我々はケンカを売りに来ているので」と鶴田を挑発し、右京さんも「我々は必ずあなたの悪事を暴いてみせます」と宣戦布告。
鶴田は栗橋に「杉下右京、冠城亘。消し去りたいねえ、あの二人。警視庁からじゃないよ」と電話で伝えます。
物語は【相棒20】へと続きます!
第1話「復活~口封じの死」はどんな話?
【相棒20第1話「復活~口封じの死」】
2021年10月13日放送
どんな話?
【相棒20】公式サイト版より引用
半年前の春。官房長官の鶴田翁助(相島一之)は、加西周明(石丸幹二)暗殺事件を主導しながら、愛人である柾庸子(遠山景織子)の“自白”によって罪を逃れた。
そんな中、鶴田が師と仰ぐ元官房長官の朱雀武比古(本田博太郎)が、3年前に仮出所していたことを知った特命係の杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)は、裏に鶴田の思惑があったのではと探りを入れる。
すると、拘置所に収容されている庸子の接見が突然、禁止となった。不審に思った右京と亘が事態を探りはじめた直後、鶴田が突如、“こてまり”に姿を現し、驚愕の事実を告げる。なんと、庸子が拘置所内で自殺したという。
冷徹で残忍な鶴田による“口封じ”を疑った特命係は、庸子の死の真相を突き止めるべく捜査を開始。同じく彼女の死に疑問を感じた元弁護士・中郷都々子(織田梨沙)も独自に動きはじめるが、やがて事件には想像以上に複雑な思惑と陰謀が絡み合っていることが発覚。
そして、ついには、亘が逮捕される事態に――!
主な出演者とスタッフ
出演者
杉下右京(すぎしたうきょう)=水谷豊
冠城亘(かぶらぎわたる)=反町隆史
小出茉梨(こいでまり)=森口瑤子
伊丹憲一(いたみけんいち)=川原和久
芹沢慶二(せりざわけいじ)=山中崇史
角田六郎(かくたろくろう)=山西惇
青木年男(あおきとしお)=浅利陽介
出雲麗音(いずもれおん)=篠原ゆき子
大河内春樹(おおこうちはるき)=神保悟志
益子桑栄(ましこそうえい)=田中隆三
内村莞爾(うちむらかんじ)=片桐竜次
中園照生(なかぞのてるお)=小野了
衣笠藤治(きぬがさとうじ)=杉本哲太
社美彌子(やしろみやこ)=仲間由紀恵
甲斐峯秋(かいみねあき)=石坂浩二
☆
鶴田翁助(つるたおうすけ)=相島一之
柾庸子(まさきようこ)=遠山景織子
中郷都々子(なかざとつづこ)=織田梨沙
鷲見三乘(すみみのる)=味方良介
栗橋東一郎(くりはしとういちろう)=陰山泰
階真(きざはしまこと)=辻本祐樹
三門安吾(みかどあんご)=山田明郷
柾七平(まさきしちへい)=長江英和
朱雀武比古(すざくたけひこ)=本田博太郎
加西周明(かさいしゅうめい)=石丸幹二
ほか
スタッフ
脚本=輿水泰弘
監督=橋本一
音楽=池頼広
エグゼクティブプロデューサー=桑田潔
チーフプロデューサー=佐藤涼一
プロデューサー=髙野渉、西平敦郎、土田真通
ほか
第1話のストーリーはどうなった?(ネタバレ?)
柾庸子逮捕のニュースに粛々と記者会見する鶴田内閣官房長官、それを見て憤慨する都々子、都々子の父親で弁護士の三門に6億円の一部を官房機密費から渡す鶴田。スポーツジムで笑う謎の女。
都々子の回想。加西との会話。
都々子「前、うちのボスに小さい箱を渡してたでしょ。あれ、何?」
加西「切り札さ」
特命係の2人が牧場で馬の世話をする朱雀を訪れる。そんな感じで【相棒】オープニングソングへ。
朱雀武比古は浦島太郎?
右京に「忘れずにいてくれたとは光栄だ」と感慨深げな朱雀は、右京の隣にいる亘を亀山薫と勘違い。薫が警視庁をやめて今はサルウィン共和国にいること、小野田官房長が2010年に亡くなったことを知り、長時間、服役していた自分は「浦島太郎」状態であると嘆く。
鶴田による手回しでの仮出所なのかと勘ぐる右京を煙にまき、朱雀は鶴田について「彼は私と違って女でしくじったりはしないだろう」と含み笑いする。朱雀はかつて《愛人》の片山雛子に《裏切られた》過去がある。一方で鶴田は愛人の柾庸子が逮捕され、土壇場で救われた…
右京たちが帰ってから、朱雀は鶴田に電話。「困ったことがあったら遠慮なく言ってきなさい。力になるから」と声をかける。電話の中で、鶴田は小野田官房長について「私の中では最も理想とする権力者の一人でした」と語った。
夜、どこかの病院でストレッチャーを押して駆け込んでくる騒々しい音が部屋の中に聞こえてきて、入院患者の青年は眠れないのでイライラする。
右京と亘が拘置所に柾庸子の接見に出向くと、直前に訪れた都々子が庸子との接見禁止を伝えられていた。川べりで3人が話す様子を橋の上から見ている謎の女。
都々子は弁護士の先輩で庸子の担当弁護士である森安伸治に話を聞くが、森安も「当分は面会不要」と庸子本人に言われて、面会はできなくなっていた。
特命係は検察庁の階真に接見禁止の真相を聞きに行くが、けんもほろろに扱われる。
柾庸子の死は自殺か他殺か?
2人が「こてまり」を訪れると、先客として鶴田が座っていた。鶴田は、接見禁止の理由は自殺であると2人に告げる。2人が接見に行った時には庸子は、すでに死亡して存在していたらしい。
翌朝、新聞やネットニュースなどで柾庸子の死が報道される。
検察が庸子の死を内々に処理した事で、すっかり善人になっている内村刑事部長は「我々に報告があってしかるべきでは。警察が出動して実況見分をおこなうべきだ」と衣笠副総監に抗議するが、「デュープロセス(適正な手続き)では社会は回らない。いい歳して何でもかんでも噛みつくな」と副総監に文句を言われるだけ。
特命係の部屋に青木が来て、鶴田について「柾庸子が生きている限り、鶴田は枕を高くして眠れない。手を回して殺しちゃったに決まってますよ」と楽しそうに自論を述べる。
青木は「ただし自殺の裏付けはある」として、東京地検警務部のファイルサーバーをハッキングして見つけた柾庸子の遺体写真を右京に見せる。庸子の首には索条痕が残っていた。
柾庸子家の墓を訪れる都々子。庸子の父である七平が現れて、遺体を運ぶとそれなりの費用がかかるのですでに燃やしてもらったこと、葬式をおこなわないことを告げる。「人殺しの葬式なんか誰も来やしねえ」と吐き捨てる七平に、都々子は「推定無罪って知ってる? 裁判で罪が確定するまで無罪なの。だからまだ庸子ちゃんは人殺しじゃない」と気持ちをぶつける。
さすがに庸子が口封じされたというのは勘ぐりすぎか。しかし青木の言う通り、柾庸子が生きている限り鶴田が枕を高くして眠れないのも事実である。あの鶴田なら暗殺ぐらいやってのける…
右京は、朱雀が言った「 鶴田は女でしくじらない」と言うのを「女性を見る目がある」ではなく「最初から全幅の信頼をおくような真似をしない」と理解した。用心深い。猜疑心が強い。必要であれば容赦なく切り捨てる。鶴田が冷徹で残忍な人物だということを右京と亘は再認識する。
弁護士事務所から鍵が盗まれ、犯人は亘?
三門が弁護士事務所の自室に入ると、加西周明からの預かり物が盗難されていることに気づく。それは「鍵」で、三門はすぐに鶴田に報告。
都々子がカフェテリアに右京と亘を呼び、盗み出した鍵を取り出して「調べてくれない?」と頼む。加西周明の物だと告げると2人は興味を示す。その様子を物陰から見ている謎の女。
内調が三門の部屋に仕掛けた隠しカメラに、都々子が鍵を盗むところが映し出されていた。映像を見て高笑いする鶴田に、栗橋が「しかし鍵は中郷都々子のもとには無いようです」と告げる。
大河内監察官と青木、捜査一課の面々が特命係の部屋に乗り込む。亘が「調べてほしい」と青木に鍵を渡していたが、その鍵が盗まれた物であることがわかったからだ。しかも、亘が三門の部屋に侵入して鍵を盗む映像まであるという。右京に問い詰められると亘は「黙秘します」と答える。
右京と大河内が別室で会話。盗難情報の出どころは内調だった。加西をめぐる一連の事件によって、三門の事務所は監視対象になっていたらしい。
大河内は「冠城亘の単独犯とは思えませんがねえ。共犯、窃盗を教唆した人物が身近にいるはずです」と右京をけん制する。「しかしこの件、ボヤで済ませたい。大火事にならないように身を謹んでください」と釘を刺す大河内。
亘が鍵を盗んでいる映像について、青木は「フェイク判定できませんでした」と右京に報告。フェイクでなければ、本物ということになるが…
右京さんが亘にまさかの激昂プルプル
右京がカラオケルームの個室に都々子を呼び出す。用心に越したことはないという右京だが、ドアの窓から謎の女が一瞬、覗いていたようだ。
「なぜ鍵を盗んだのか」と問う右京に、加西が鍵のことを「切り札」と言っていたから、と答える都々子。都々子は鍵を切り札として鶴田と交渉し、庸子が起こした数々のおかしな行動の真相を知りたい。「鶴田と肉体関係はあったかもしれないけど、庸子ちゃんは男に溺れたりしない。自殺なんか絶対にしない。物心ついた時からずっと一緒の私が言うんだから間違いない」と右京に話す。
取調室。黙秘を続ける亘に、右京は「往生際が悪いですねえ。映像を見ました。間違いなく君です。君の犯行です。ただちに罪を認めてただちに拘置所へ行きなさい!」と激昂する右京。「そして君は君のすべきことをなさい!」とも。亘は「俺がやりました」と自白する。
鑑識の部屋。益子が「部長が検察から取り寄せて精査しろって言うんで、したけどさ」と言って右京に柾庸子の検死資料であるDVDを渡す。
ディープフェイクといえば、あの女
特命係の部屋に右京、社美彌子、甲斐峯秋がいる。右京が読んでいるのは「甲斐峯秋の不徳 子息ばかりか部下まで犯罪者」と見出しが躍る明日発売の雑誌記事。
美彌子には、最終目標が鶴田翁助だということ、冠城亘の逮捕と送検もその目標達成のためということが分かっていた。
右京は「向こうが仕掛けてきたディープフェイクに乗っかって、柾庸子の死について調査しているところです」と2人に話す。
峯秋は「冠城くんの映像を僕も見たが、あれもフェイクなのか?」と質問する。「盗み出したのは別人、そしてその詳細は、ノーコメント」と答える右京。
右京は、ディープフェイク映像を研究していたのが鬼石美奈代を思い出す。美奈代を全面支援していたのが内調で、その背後には鶴田がいる…
栗橋が謎の女に「決行してくれ」そして…
鍵が警視庁から鶴田に渡った。鶴田は三門に、亘による窃盗事件は示談にしたいと申し出る。
表向きは警察のメンツが丸つぶれしないように、である。
栗橋がスポーツジムで汗を流している謎の女に電話で「決行してくれ。君のタイミングでかまわない」と伝え、女は満面の笑みを浮かべる。
亘は独房で仮病を使って大騒ぎし、夜中に仮病を使って東京拘置所医務部病院に運ばれる。医務室から脱走するが、すぐに捕まってしまう。連行される際に、入院患者の青年が「いい加減にしろよ。先週の夜に続いて今夜もか。まーた自殺騒ぎかよ。うっせーわ!」と叫ぶのを聞く。
先週の夜…柾庸子が自殺した日だ。庸子は病院に運ばれていた。遺体の写真を見る限り、庸子は蘇生の見込みがなかったと思われる。そんな状況で看護師があわただしく走ったりしない。走るという行為は自殺を図ったがまだ息がある段階で運び込まれてこそだ。命をつなぎとめるのに一刻を争うから騒ぎにもなる。そうなると、遺体の写真とは矛盾が生じる…
右京と亘が都々子のマンションに行くと、都々子は自室のベッドで、右手にナイフを持ち、左手首から血を流して、息絶えていた。
さあ、次回はどうなる?
感想など
どんなに地位が高い人でも、不道徳で法律に反することをしているなら、正しく裁かれるべきです。
内閣官房長官が巨悪すぎてヤバい世界なんて…ありうるかも…いや、あってはいけないのだから、無いんじゃないかな…でもあるんじゃないかな…想像の世界ではいろんな悪いことをしてそうだけど、実際の世界では悪いことをしていないと信じたい…
実際はどうなんでしょうね。
【相棒】の世界では、2004年に放送された【相棒3】で、時の内閣官房長官による殺人事件の真相を右京さんが暴きました。
それから17年…2021年にスタートした【相棒20】の初回で、現内閣官房長官が、悪いことをしまくっています。
強すぎる悪を相手にして、右京さんとその相棒が真実を明るみにすることができるのでしょうか。
表舞台から退場した朱雀武比古の変化とは
常に「今」を大切にして番組制作に取り組む【相棒】が、19シーズン目の最終回では、右京さんとその敵の対決を次期シリーズに持ち越す形になりました。
【相棒19】最終回の放送が2021年3月。そこから「今」が続いて、約半年後に迎えた【相棒20】の初回で、対決の続きが描かれました。
今回も特命係は巨悪の高笑いを食い止めることはできず、続編となる次回(第2話)でも決着がつくかどうかは怪しい状況です。
内閣官房長官・鶴田翁助の壁は、そんなにも高いのか…。
今回は、17年前に右京さんに真相を暴かれた朱雀武比古・元内閣官房長官が登場しました。
朱雀は懲役18年の実刑判決を受け服役していましたが、3年前に、6年の刑期を残して異例の仮出所を遂げました。
右京さんはそこに鶴田の手回しがあったのではないかと勘ぐったようですが、真相は藪の中。
それよりも、牧場で馬を世話して生活する朱雀が、冠城亘を亀山薫のだいぶ変わった姿と認識したり、小野田官房長が2010年に亡くなったことを知らなかったりと、官房時代からは想像できない「甘さ」を露呈したことが意外でした。
情報や知識の量と優れた判断力が武器となる国家の要職に就いた人物も、長い服役生活の中で、いろんな変化があったのでしょう。
鶴田は女でしくじらない…の真意とは
一方で【相棒】の世界は、朱雀不在の17年間も「今」のリアルの最先端を駆け抜けてきました。
右京さんの相棒が交代し、小野田官房長が亡くなり、数々の犯罪と犯罪者を目の当たりにしつつ、生きるとはどういうことか問い、答え続けてきた世界です。
水谷豊さんは【相棒20】スタート直前のYouTube動画内で【相棒3】当時を振り返り「内閣官房長官を殺人犯にするドラマなんて前代未聞だった」と語っていました。
そして今、朱雀よりも強敵かもしれない、現内閣官房長官と対決しています。
朱雀は鶴田について「彼は私と違って女でしくじったりはしないだろう」と話します。
朱雀は、その後の【相棒】シリーズで「杉下右京の最大の敵」と言われ続けている片山雛子を愛人としてアリバイの証人にしていましたが、彼女に裏切られる形で失脚しました。
鶴田にも柾庸子という愛人がいます。柾庸子は、鶴田を煩わせるIT長者の加西周明が殺害された件について「すべて自分の一存」として鶴田の関与には触れずに、殺人犯として拘置されました。
その柾庸子が、拘置所で死亡します。
鶴田は、わざわざ「こてまり」を訪れて、右京さんたちに「柾庸子は自殺した」ことを告げます。しかし、さまざまな事象をかき集めると「柾庸子は自殺ではないのではないか?」という想像もできます。
朱雀武比古は愛人に裏切られ、鶴田翁助は愛人を切り捨てたのか。鶴田には情のかけらもないのでしょうか。…ないのでしょう。
「庸子が生きている限り、鶴田が枕を高くして眠れない」→「鶴田は女でしくじらない」→「最初から女に全幅の信頼はしない」→「猜疑心が強い」→「必要とあらば容赦なく切り捨てる」という過程で鶴田は「冷徹で残忍な悪人」として印象づけられていきます。
中郷都々子は視聴者への共感装置?
柾庸子の死について、庸子と物心つく頃から仲が良かった中郷都々子に疑問を抱かせることで、ストーリーは前に転がります。
加西周明が「切り札」を都々子の父である三門安吾に預けたこと。その「切り札」である鍵を三門の部屋から都々子が盗んだこと。鍵を取り上げられて不利な状況になっても「庸子ちゃんは自殺なんて絶対にしない」と右京さんに言い張り、真相を確かめようとする心を曲げないこと。
そんなシーンの積み重ねの末に、第1話の最後で、都々子は死体となって自室のベッド上で発見されます。ナイフを持ち、手首から血を流した状況で。
ここまでのストーリーを追ってきた視聴者なら「これは自殺に見せかけた殺人だな」「犯人は栗橋の指示で動く謎の女だな」という推測に導かれる展開です。
都々子の遺体を目にした右京さんと亘が巨悪を相手にする決意を改めて奮い立たせて、鶴田一派をとっ捕まえてくれる期待にワクワクしながら、第2話を待つことになりました。
信頼感絶大な7シーズン目の相棒
冠城亘との相棒生活が7シーズン目を迎えた右京さん。お互いの信頼度も以前とは比較にならないほど高まっています。
中郷都々子が盗んだ鍵。内調関係の人物によるディープフェイク動画では都々子が亘に変身しており、その映像を証拠として亘は窃盗犯として逮捕されてしまいます。
しかし、右京さんと亘は鍵を都々子から渡されているので、亘と都々子が共謀して右京さんを騙す演技をしていない限り、動画がフェイクであることは動きません。もちろん右京さんは亘を疑いません。
それどころか、取調室で捜査一課のメンバーに囲まれる亘に対して「間違いなく君です。さっさと罪を認めてとっとと拘置所へ行きなさい。そして、君は君のすべきことをなさい」と、いつも極悪犯罪者を断罪する時に使うセリフをぶつけます。
「さっさと罪を認めてとっとと拘置所へ行きなさい」とは、なるようにしかならないのなら、こんなところで油を売っていないで、柾庸子が拘置されていた場所に早く行ってこいというアドバイス。「君は君のすべきことをなさい」とは潜入捜査をして、柾庸子の死について手がかりをつかむこと。
意をくんだ亘は、次の瞬間には「俺がやりました」と頭を下げて、とっとと拘置されます。
この阿吽の呼吸は、お互いの信頼度が高くなければできないもの。改めて、すっかり相棒になっている2人だなあと感慨深くなるシーンでした。
なぜ右京さんと【相棒】は必要なのか?
地位、金、情報。すべてにおいて上に立つ者が強く、弱者が蹴落とされてしまう社会。柾庸子や中郷都々子だけでなく、IT長者の加西周明すら消されてしまいました。
そんな不穏な空気にまみれていると、朱雀武比古が暮らしている牧場の緑色の芝生が美しく感じるのは、気のせいではないのかもしれません。
服役生活の末、朱雀が選んだのは、地位や金や情報に疎くても幸福に生きることができる場所です。
その素晴らしさに朱雀が気づいたきっかけが、右京さんによって自分の醜い心が暴かれたことだとするならば、右京さんと【相棒】の必要性が理解できます。
特命係の2人が力を合わせて、巨悪の内閣官房長官を追い詰められるかどうか。
この国の未来が右京さんに託されたと言っても、過言ではない…ような気がします。
内閣官房長官が巨悪すぎてヤバい世界なんて…ありうるかも…いや、あってはいけないのだから、無いんじゃないかな…でもあるんじゃないかな…
だとしたら。