2000年にスタートしたドラマ【相棒】の新シーズン【相棒20】が、2021年秋から放送されています。
水谷豊さん扮する杉下右京と反町隆史さんが演じる冠城亘(かぶらぎわたる)が、警視庁のたった2人の特命係として事件を解決に導きます。
2022年1月1日放送の元日スペシャル【相棒20第11話「二人」】はどんな話なのでしょうか。
本編視聴後にストーリー(ネタバレ)と感想などを記述します。
(画像はテレビ朝日より引用)
【相棒20第11話「二人」】はどんな話?
【相棒20第11話元日スペシャル「二人」】
2022年1月1日放送
どんな話?
【相棒】公式サイトより引用
年末、峯秋の誘いで高級レストランを訪れた右京(水谷豊)は、与党政調会長の袴田(片岡孝太郎)と経済界の重鎮が、会合を開いているところを見掛ける。個室のテーブルには、3人の席が用意されていたので、もう1人、参加者がいると思われた。
同じ夜、落としたスマホを探していた少年が、大人同士が言い争う姿を目撃。それに気づいた男に、落としたスマホを持ち去られてしまう。
翌日、年末年始の当番勤務にあたっていた亘(反町隆史)は、ある女性から呼び出しを受ける。同じく当番だった右京に、「紹介したい人がいる」と言い、連れ出した先は教会。そこにいたのは、亘の姉・由梨(飯島直子)だった。
ピアノ教師をしながら教会でボランティアをしているという由梨は、保護した記憶喪失の男性(イッセー尾形)の身元を調べてほしいと依頼する。しかし、本人が“湊健雄”と名乗っている以外、手掛かりはなし。唯一、大手鉄道会社の駅売店の名前が記憶に残っているらしいが…!?
そんな中、右京と亘は、湊を最初に見つけた2人の少年から話を聞く。利発な2人は、当時の状況を分かりやすく説明してくれたが、何かを隠している様子。どうやら、片方の少年が、雑木林でスマホをなくしたようで…!?
身元調査の糸口を求めて、駅売店の本社を訪れた右京と亘は、同社が非正規雇用の賃金問題で紛争を抱えていることを知るが、湊に関する情報は得られなかった。同じ頃、少年のスマホを手にした男が、身分を偽り、2人のすぐそばまで迫っていた。
2人の少年は何を目撃してしまったのか!?
亘の姉が保護した記憶喪失の男とも関係が?
人々の思いが交錯するとき、驚きの真実が明らかになる!
テレ朝POST版
年の瀬――年末年始の当番勤務のため登庁していた特命係の杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)。その間、何度も亘の携帯電話が鳴るものの、なぜか本人は出ようとしない。
やがて観念した表情を浮かべた亘が「折り入って紹介したい人がいる」と切り出したため、右京は驚く。
てっきり婚約者に引き合わされるものと思って緊張していた右京だが、亘に連れて行かれた先は教会で、待っていた美しい女性は亘の姉・由梨(飯島直子)だった。
ピアノ教師として働きながら教会でボランティア活動を行っているという由梨は昨晩、保護した高齢男性について相談があって亘に連絡したと話す。
由梨によると前夜、公園を通りかかった小学6年生の男の子・早瀬新(西山蓮都)と峰岸聡(川口和空)が、泥だらけで座り込んでいる男性を発見し教会に連れてきたという。
男性は頭部にケガをしており、“湊健雄(イッセー尾形)”と名乗ったもののそれ以外は覚えていない様子で、脳震盪の衝撃による記憶喪失と診断されたらしい。
右京と亘は発見時、湊が上質なスラックスにくたびれたスニーカーを履いていたことを聞き、そのアンバランスな服装に疑念を抱く。
また、湊と遭遇した夜、新はスマートフォンを紛失し聡とともに公園で捜していたこともわかるが、2人がそれを大人たちにひた隠していることを不審に思う。
右京たちはさっそく湊の素性を調べはじめるが、その矢先、新が“ある頼みごと”を持ちかけた由梨のボランティア仲間が遺体となって発見され、事態は思いがけない方向に…。
その後も、複雑に絡み合う謎をひとつひとつ紐解いていく特命係。やがて、事件を結ぶ細く黒い糸は与党政調会長・袴田茂昭(片岡孝太郎)へとつながっていき…!?
はたして黒幕は誰なのか、そして湊は何者なのか、すべてを暴くため右京は危険な賭けに出る…!
主な出演者とスタッフ
出演者
杉下右京(すぎしたうきょう)=水谷豊
冠城亘(かぶらぎわたる)=反町隆史
小出茉梨(こいでまり)=森口瑤子
伊丹憲一(いたみけんいち)=川原和久
芹沢慶二(せりざわけいじ)=山中崇史
角田六郎(かくたろくろう)=山西惇
青木年男(あおきとしお)=浅利陽介
出雲麗音(いずもれおん)=篠原ゆき子
益子桑栄(ましこそうえい)=田中隆三
土師太(はじふとし)=松嶋亮太
社美彌子(やしろみやこ)=仲間由紀恵
甲斐峯秋(かいみねあき)=石坂浩二
☆
湊健雄=イッセー尾形
袴田茂昭=片岡孝太郎
冠城由梨=飯島直子
早瀬新=西山蓮都
峰岸聡=川口和空
ほか
スタッフ
脚本=太田愛
監督=権野元
音楽=池頼広
エグゼクティブプロデューサー=桑田潔
チーフプロデューサー=佐藤涼一
プロデューサー=髙野渉、西平敦郎、土田真通
ほか
その後どうなった?(ネタバレ)
甲斐嶺秋が右京たちを高級レストランに誘ったのは「こてまり」が繁盛してしまって予約が取れなかったからだった。
内閣情報調査室。社美彌子が「最初から人数は5人と決まっている。だから3人を押さえてしまえば決まり。そう考えてるんでしょうね」とひとりごちる。
秘書の石川が「官邸のほうはこの件に関してもう触れるなと」と進言すると、美彌子は「起こっている出来事を知らないでいる人間と、知っていて黙っている人間と、どちらが価値があると思う?」と言う。
結城宏が初老の男性を殴り倒してしまう
公園で結城宏という男が初老の男性を殴り倒してしまう。初老の男性が死んでしまったと思った結城は男性をベンチに寝かせて、電話をかけ別の男を呼び出す。
電話で呼び出された男がベンチの前で結城を叱責しているところを、早瀬新のスマホを探して公園に来た峰岸聡が目撃し、スマホで動画を撮影する。
動画を撮られていることに気がついた結城が聡と新のほうに寄ってくる。新は聡を引っ張って滑り台の裏に隠れる。
新のスマホが鳴り、結城が拾う。新の祖母の早瀬君枝からの着信だった。結城は新のスマホを持ち去る。
新はスマホを取り返すため「マメさん」と呼んで慕う遠藤佑人に、聡が撮った動画の解析を頼む。動画では結城が「確かにここにあったんです」などと話す声も収録されていた。
角田課長が「湊健雄」を覚えている?
結城に殴られた初老の男性は新と聡に発見され、福田という男の助けを借りて冠城由梨がボランティアを務める聖マティス教会に引き取られていた。男性は「湊健雄」という名前以外に「デイリーハピネス」という言葉を思い出す。
右京と亘は、新と聡に話を聴く。新と聡は公園に行った理由をごまかす。聡の母の瑛子が来ると、新は逃げるように場を去る。
角田課長が「湊健雄」という名前について、どこかで聞いた覚えがあると言う。しかしよく思い出せない。
右京と亘は公園で巡回警備員の高田という男に出会う。高田は「ボンバー高田」という名前でSNSに動画を投稿しているという。高田は前夜、公園で新と聡が何かを探している様子を目撃していた。
デイリーハピネス本社前での騒動
入院している君枝の病室に見舞いに行く新。足の骨にヒビが入っているだけという君枝が何かの検査を受けたことを気にする。
新は湊健雄に「ちょっとした仕事」を頼まれてくれたら、家に泊めてあげてもいいと話す。小学6年生の新は君枝と2人暮らしだが、君枝が入院しているため1人で生活していた。
「デイリーハピネス」はキャピタル鉄道の駅売店の名称。右京と亘が駅売店に勤める浦野芳子に話を聴くと芳子は労働条件が厳しいとグチをもらす。
右京たちはデイリーハピネス本社の種村栄一らに話を聴こうとするが、何も教えてもらえない。
その帰り、デイリーハピネス本社を出たところで、プラカードを持った集団と出会う。彼らは「非正規差別NG」と書かれたビラを渡し「格差を無くせー!」「退職金を払えー!」などと本社に向かって声をあげる。
高田がやらかしたこととは?
結城が君枝の携帯電話に、学年主任を騙って電話をかけて新が聖マティス教会に出入りしていることを突き止める。結城は教会で福田に遠藤のことを教えてもらう。
新の部屋に由梨が来ると、新は湊がいることを由梨に隠す。
右京は湊健雄の財布や時計、眼鏡、ジャケットなどを高田がリサイクルショップ「泥棒市場」に売り払っていたことを突き止める。
高田は、それらの物が公園のベンチとベンチの間に置いてあったので拝借してしまったと白状する。
右京たちが鑑識課の益子に頼んでベンチを見てもらうと、ベンチから血痕と毛髪が検出される。右京は湊健雄の革靴と新のスマホが誰に持ち去られたのかが気になる。
実家の部屋で思い出に浸る冠城亘
由梨によると、峰岸瑛子は貧しい暮らしをする新が気に入らないようで、聡と新が一緒に遊ばないように言いつけているらしい。
亘は久しぶりに冠城家の自分の部屋に泊まることにする。そこで宛名のところに「冠城亘」と書かれたハガキを取り出す。
新が湊に頼んだ「仕事」とは、湊が君枝の親戚になりすまして、医師に君枝の検査内容について問いただすことだった。
医師は君枝には深刻な病気などないと答える。新はたった1人の肉親のことが心配で心細かったのだ。湊は病室で君枝と談笑する。
遠藤の遺体が発見される
運河沿いの倉庫で男の遺体が発見され、伊丹刑事や芹沢刑事、出雲麗音らが駆けつける。遺体の手首には「♾(無限大)」の記号が刻印されていた。遠藤だ。
遠藤を殺したのは結城だった。遠藤は聡が撮影した動画から、公園のベンチの前で話しているのが袴田と秘書の結城であることに気がつき、結城に「公園で死体を始末したのは自分だ」と話し、結城に金銭を要求していた。
遠藤の死を悟った新は聡に「公園で撮った動画は俺のスマホで撮ったことにする。いいな」と話し「あと、俺ん家にもう遊びに来るな」と言って聡の襟首をつかむ。そこを瑛子に発見され「一緒に遊ばないって約束したじゃない」と叱責される。
新は後を追ってきた亘に「世の中みんな自己責任なんだよ。俺たちみたいなのはどこまで行っても努力がたりないんだ」と話し、心を閉ざす。その様子を右京も聞いていた。
角田課長が「湊健雄」を思い出す
角田が「湊健雄」は売れない演歌歌手だったことを思い出した。その売れない演歌歌手「湊健雄」の正体は福田だった。
福田は右京に白状する…福田は公園で初老の男性を発見した時、男性の革靴を盗んでしまった。その時、上着や腕時計、財布なども男性の体から外したが、出てきた名刺入れを見てびっくりするうちに男性が起き出してしまった。
男性がふらふらしているところを新と聡が発見し、福田がもう一度、男性と2人きりになったところで、湊にいろいろ忘れていてほしいと思い男性に「自分は湊健雄という名前だ」と思い込ませた。
男性の本名は若槻正隆。最高裁判所判事だった。
事件の真相は…
若槻は袴田代議士が絡む事件を担当していた。袴田は結城に、若槻を懐柔するように命令していた。若槻は結城の申し出を突っぱね、公園でもみ合ううちに、結城が若槻を突き飛ばしてしまったのだ。
右京は、年の瀬にレストランで袴田を見た時の個室テーブルに3人分の席が用意されていたことから、あの場に袴田が若槻を呼んでいたことを突き止める。
社美彌子から、レストランで袴田と同席していた経済界の重鎮がキャピタル鉄道の会長に就任することを知らされる右京。
2020年4月、同一労働同一賃金を掲げたパートタイム有期雇用労働法が施行された。今後は多くの訴訟がなされ、その判例の積み重ねがこれからの社会の規範を作っていく。袴田は5人の判事のうち3人を懐柔すれば経営者側に有利な判決を確約できると考えた。
あの日、袴田は経済界の重鎮を若槻に引き合わせるつもりで結城を迎えに行かせた。ところが若槻は、担当裁判の利害関係者が来ると知って会うことを拒んだ…。
右京と袴田の対決
結城が新を襲撃し、車で連れ去る。それを目撃していた聡が右京たちに「新を助けて」と頼む。右京は「君の協力が必要です」とやさしく聡に語りかける。聡は、新のスマホを持ち去ったのが結城であることを証言する。
結城は新だけでなく若槻も拉致し、拘束する。
右京は、結城が新のスマホの電源を入れた瞬間に居場所を特定し、袴田から新のスマホに電話をかけさせて、結城を説得するように交渉する。
袴田は捜査への協力を申し出て結城との会話の録音を許可。
捜査本部から結城に電話をかけた袴田は若槻のことを「死人」と表現した。
若槻が死んだと思っているのは、遠藤に騙された結城と袴田の2人だけだ。袴田は「私は若槻判事が死んだなどと言った覚えはない」と言い張るが会話は録音されている。袴田は自らの口で犯行を認めてしまったのだ。
「警察官ごときに何がわかる!」と開き直る袴田を「あなたのように自分たちの利益しか考えない愚かな権力者たちが、このような歪んだ社会を作ったんですよ!」と一喝する右京。
亘が右京に少年時代を打ち明ける
新と聡が再会し喜びをわかちあうのを見て、亘は右京に「俺にも新くんみたいな友達がいたんです」と語りかける。
和也というその友達に嫌われたと思った亘は、転校することになった和也の連絡先を知ろうと思い、自分宛のハガキを渡そうとしたが、渡せなかった。亘はそれを今でも後悔している。
「子供の頃のことは忘れられませんよね。でも、彼らはきっと」と右京は言い、温かい目で新と聡を見つめる。
「私が間違っていました」と新に詫びる瑛子。
記憶を取り戻した若槻判事が右京たちに挨拶する。新は若槻に「今度おばあちゃんとデート行ってくれる?」と頼むのであった。
公園でひとり演歌を口ずさむ福田に「お上手ですね」と声をかけたのは高田。高田は「動画、お好きですか?」と福田を誘う。
年明け。こてまりを貸し切りにできてご満悦の嶺秋。右京は「あの日、こてまりさんが断ってくれなかったら事件は解決できなかったかもしれませんねえ」と振り返った。
感想など
2022年の元日スペシャルは、お正月にのんびり視聴するには最適な「わかりやすくて、面白くて、痛快な【相棒】」の持ち味が発揮されつつ、人が支え合って生きる大切さについて深く考えさせられる内容となりました。
犯人が最初からわかっているストーリー
今回のエピソードが分かりやすかった要因のひとつに「殺人犯が誰か最初から明かされていた」ことが挙げられるでしょう。
このところの【相棒】は「真犯人は誰か」を探りながら終盤に向かっていく、刑事ドラマの王道スタイルが続いていました。
犯人が最初からわかっているパターンだと、右京さんたちが終盤に向けて真相にたどり着いていく過程で、中だるみがあるとストーリーに飽きを感じてしまう場合があります。
しかし今回の「二人」はよく作り込まれていて、真犯人の追い詰められていく心理と、事件に巻き込まれた人人の心情の機微が上手い具合に噛み合って、終盤まで一気に進んでいきました。
「誰が犯人か」という探偵ゲーム的な要素より「小学6年生の新や記憶喪失の男がどうなってしまうのか」「右京さんはどうやって2人を助けるのか」といったドキドキに視聴者が集中しやすい展開になったため、「わかりやすさ」がパワーを発揮して、しかも「右京さんが悪をくじいてくれる」安心感を予期できることから、終盤に向けてワクワクが増幅していくのです。
新は思いやりのある傷つきやすい子供
早瀬新と峰岸聡は仲の良い友達です。しかし、聡の母は「新が貧乏人の家の子だから」という理由で、聡に新と一緒に遊ばないことを約束させています。
それでも仲良く遊んでいる二人。新がスマホを紛失してしまい、事件に巻き込まれていくことになります。
新はとても心がきれいな人間で、誰とでも仲良くなれる気質の持ち主のようです。教会でボランティアをする冠城由梨や藤田、マメさんらとも親しくしています。
スマホを紛失した件に絡んでマメさんの身に不幸があったと悟ると、新は聡に危険が及ばないように、聡を自分から遠ざけようとします。
二人の人間がいて、相手を大切に思うばかりに、突き放してしまう不器用なやり方。その正義感を屈折しているととるか、純情ゆえととるか、その両方であるのか、捉え方はさまざまですが、新の子供なりの優しさがひしひしと伝わってきます。
一方で新は、記憶喪失の「湊健雄」に「ちょっとした仕事」を頼みます。湊は頭部をケガしていますが容赦しません。
その仕事とは、たった1人の肉親である祖母の病状を医師に確認するものでした。
新にとっては祖母との「二人」での暮らしはとても大切なものであり、祖母のことが心配して心細かったのです。
そうした心情をくんであげる湊を、新は「友達」と呼びます。ここにも新と湊という「二人」の独特な世界があります。
さまざまな「二人」の関係
今回はタイトルが「二人」ということもあり、さまざまな「二人」の関係がクローズアップされました。
新と聡。新と君枝。新と湊。
もとはといえば【相棒】は右京さんとその相棒による「二人」が主人公の物語です。
人は支え合っていくことで無限大のパワーを発揮して生きていくことができます。「一人」より「二人」。その素晴らしさ。
殺人犯となった結城は「仕事」として与党政調会長の袴田と「二人」の関係にありますが、その実態は袴田が結城を利用するだけのつながりでした。
もし袴田に「思いやり」があって、そのうえで「二人」の関係が築けていたら、結城が泥沼にハマることは無かったかもしれません。
若槻正隆が身につけている物を拝借してしまった高田と福田が最後に知り合うシーンは、今回のエピソードのテーマが「二人」であること、その温かみを象徴的に語っていました。
裏切らない【相棒】も素晴らしい
ドキドキの展開の末に右京さんが悪を一喝して締める、という「わかりやすさ」は、お正月に家族みんなで見る時間帯としての【相棒】ではいちばん望まれる展開でした。
一時期は、元日から重い展開のスペシャルが続きました。右京さんの一喝すら通じない快楽連続殺人犯の登場に魂をえぐられる元日の夜を過ごしたこともありました。
でもやはりお正月くらいは楽しく過ごしたいものです。わかりやすすぎるほどの勧善懲悪となった「二人」は、家族でこたつに入ってミカンを食べながら、どこかで触れたことがあるようなストーリーに「ああ、こういう展開あるある」とニヤニヤしながら見ることができる、最適な構成でした。
視聴者との関係において、制作スタッフが「裏切りこそ【相棒】の真骨頂」なんて表現することがあるほど「何が起こるかわからないのが【相棒】の醍醐味」とも言われますが、じっさいは「裏切らない【相棒】」こそ安心して楽しめる、最高の娯楽だなあとも思うのです。
声に出して読みたい右京さんのセリフ
与党政調会長・袴田と対峙して
袴田「警察官ごときに何がわかる。この国の経済を動かすには、低賃金で働く労働者が不可欠なのだ」
右京「国の経済…僕には、あなたとあなたのお友達の経済にしか思えませんがね」
袴田「国力を高め、国を豊かにするために必要な物を確保する。それが為政者の仕事だ」
右京「なるほど。あなたがたにとって、低賃金で働く労働者は国民ではなく物というわけですか。確かに彼らはあなたがたのように何かあればすぐに病院の特別室に入れるわけではない。しかし、そんな人々にも、大事な家族や生活がある。どんな人にも、守りたいと願うそれぞれの幸せがあるんですよ!」
袴田「それこそ自分でどうにかしたらいいんじゃないのか」
右京「そうでしょうか。12歳の少年が何もかも受け入れて諦めて、この世は自己責任だという。困った時に助けを求めることすら恥ずかしいことだと思い込まされている。それが豊かな国と言えるでしょうか。公正な社会と言えるでしょうか。袴田さん。あなたのように自分たちの利益しか考えない愚かな権力者たちが、このような歪んだ社会を作ったんですよ」
袴田「杉下とか言ったな。おまえとはいずれ、決着をつけなければいけないようだ」
右京「望むところです」