『アイドルの理由』は、筆者(せしる)がライブハウスで出会った『本気のアイドル』『本物のアイドル』『気になって仕方がないアイドル』について、アイドルさん本人へのインタビューを中心に紹介し、その「こころ」に迫る企画です。

⬆️僕には通じない
2025年12月19日、金曜日。
つくばエクスプレス浅草駅前、ドン・キホーテが入るビルの7階にあるライブハウス『浅草VAMPKIN』にて、【僕には通じない】(僕通)の2週連続ワンマンライブの2本目が開催された。
1本目となる12日のライブでは、フロアは安全ゾーンのみに設定され、ファンは静かにメンバーのパフォーマンスを楽しんだ。
19日はアグレッシブゾーンだけ(ただし最後方に安全ゾーンも設定された)での公演。
私は、フロアでファンがどんな暴れ方をするのかわからず、ちょっと怖くて知り合いと一緒に後ろのほうで開演を待っていた。
スタート時刻になり、出演者の4人(蓮水ゆう、夜桜りむ、賀茂さゆ、来玲町しあり)がステージに登場する。
メンバー、一人ひとりの眼差しの強さに吸い寄せられて、後方にいた自分の体が、自然に最前に突っ込んでいた。
渾身のパフォーマンスを、できるだけ近くで見たい。大騒ぎのファンに揉まれながら、必死に4人の動きを追いかけた。

⬆️左から 蓮水ゆう 賀茂さゆ 来玲町しあり
【僕には通じない】とは『ボカロとロックの融合が軽快に奏でる内面の葛藤』
『僕には通じない』(僕通=ぼくつう)は2021年6月結成の女性アイドルグループ。年間200本近くのライブをおこなっている。
2025年12月30日に夜桜(よざくら)りむが卒業し、現在のメンバーは蓮水(はすみ)ゆう、賀茂(かも)さゆ、来玲町(くれまち)しあり、陽凪(ひなぎ)みおの4人。

⬆️12月30日、夜桜りむ卒業公演のポストより
陽凪みおが体調不良による休養中で、2026年1月時点では蓮水ゆう、賀茂さゆ、来玲町しありの3人がステージに立つ。
グループ名からは既成概念への強い「拒絶」や「反抗」の意志を感じる。
一方で、アニメの主人公がその成長過程で「僕には通じないよ」と語る裏には「こころ」の弱さを「強がり」で克服しようと自分を鼓舞している場合がある。
蓮水ゆう(以下、ゆう)
「普段は言えない、内面に秘めている気持ちを表現した楽曲がコンセプトになっています」

若者が抱える内面の繊細さは「自分の気持ちを伝えたいけどうまく伝えられない」というもどかしさや葛藤に代表される。
『僕(の内面は自分以外の人たち)には通じない』という閉塞感が内包されている、という解釈もできる。
『僕通』の楽曲は若年層世代を中心に人気が拡がる「ボカロ」と「ロック」の2つのサブカルチャーを組み合わせた『VOCAROCK』で構成されている。
『VOCALOID(ボーカロイド)』の略称である『ボカロ』は、パソコンなどのソフトにメロディーと歌詞を入力することで、人間が歌っているような歌声を作り出すことができる仕組み。
『Vocal(歌声)』と『Android(アンドロイド)』を組み合わせた造語である。ブームの火付け役は2007年に発売された『初音ミク』だといわれている。
機械で打ち込まれた楽曲を機械が作り出したキャラクターが歌うボカロには、歌詞にこめられたさまざまな想いとは裏腹に、生身の人間が歌っているわけではないという点が興味深い。
日常にSNSが欠かせなくなった若者世代にとって、ネットの世界でも他人との関係に気を使わなければならないプレッシャーを、既存の価値観から離れた「何者でもない存在」であるボカロが癒してくれる。
ボカロの持つ「無機質な透明感」に『僕通』は敢えて生身の人間が歌うことによって魂を吹き込んだ。
透明なこころに「血を通わせる」挑戦的な試みは、孤独な感情をライブハウスで「みんなで共有する」体験によって、聴く人たちの疎外感を『僕通』とその楽曲が「同じ気持ちを抱えた人がいるよ」「君は独りじゃないよ」と救ってくれる。
【蓮水ゆう】V系とボカロを愛する『縁の下の力持ち』が『僕通』のオーディションを受けた必然

⬆️蓮水ゆう
蓮水ゆうは、ショートカットのイケメンというボーイッシュな外見と「中性ボイス」が特徴的で、女子アイドルファンの中心を占める男性だけでなく、同世代や年下の女性からも支持を得る。
彼女は最初からアイドルをめざしていたわけではなかった。
ゆう
「じつは、イベントをつくるスタッフのほうだったんです。表に出てパフォーマンスするよりも、ライブに関わる物をコツコツ作ったりするのが好きでした。衣装やメイクを担当することが多かったですね。裏方として『みんなでライブをつくりあげる』ことが楽しかった」
『僕通』公式サイトによる蓮水ゆうのプロフィールには「Like」として「エヴァ、V系、ニョロニョロ、紙袋」が挙げられている。
V系(ヴィジュアル系)バンドのライブには、中学生の頃から通っていた。
ゆう
「同時にボカロも大好きで。『僕通』の『VOCAROCK』というコンセプトを知って、ボカロの繊細さとV系の熱量を同時に表現できるんだ、これはやりたいと思い、オーディションに参加しました」
「もう4年かあ」と蓮見ゆうが呟いた。
彼女のステージデビューは2021年12月5日。それまで、V系とボカロが好きな彼女には「アイドル」は遠い存在だった。
舞台に立ち始めると、ファンが「気持ち」や「時間」そして「お金」を使ってライブに来て応援してくれることのありがたさに気がついた。
それから4年間、『僕通』のメンバーとして舞台に立ち続けている。
ライブでの蓮水ゆうの魅力は歌唱だけではない。
情熱をこめた煽りでフロアを盛り上げたかと思えば、いつの間にか穏やかな笑顔を浮かべている。
ダンスで見せる動きでは「引き」と「消し」の表現の鋭さに驚かされる。
他のメンバーの歌唱パート時に、舞台に立っているはずの蓮水ゆうが「消える」瞬間がある。と思えば、急に殺気を伴って現れる。表現のスペシャリストだ。
2025年に発表された楽曲『ゴーストハザード』では、本物の幽霊(?)を想起させるゾクッとさせられる。ダンスに定評のある賀茂さゆも「あれはすごい」と感嘆する
【賀茂さゆ】一度はあきらめたダンスの道…『僕通』と出会い確信した『生涯アイドル宣言』の真相

⬆️賀茂さゆ
賀茂さゆは恐ろしいほどの美人だ。
筆者はほぼ「ショートカットのアイドル」しか見えていないのだが、賀茂さゆは、ロングヘアながら「美しい!」と認めざるを得ない、正真正銘の美人。
本人と会った時に、その魅力について「妖艶」という言葉を伝えたら、首をかしげていた。確かに自分でもチョイスを間違えたような引っかかりがあった。
その後、もう一度ライブを見たら「妖艶」も確かに感じたが、それ以上に「陶酔」の表情に圧倒された。
「陶酔」とは「うっとりしてその境地に浸ること」を意味する。
「ナルシズム」は得てして「自己満足」を想起させる点でポジティブに捉えられない面がある。
しかし、賀茂さゆがパフォーマンスで見せる陶酔感は、純度100%の美しさとしてフロアに伝わってくる。
自己への没入について、本人も意識しているところがあるという。
賀茂さゆ(以下、さゆ)
「常に自分が『どう見えるか』という観点を意識していますね」
賀茂さゆの「究極の自己プロデュース」としての「魅せるナルシズム」は、彼女が作り上げた最高の美しさの結晶。
その「陶酔」を深めているのが、賀茂さゆの表情と全身から放たれる「妖艶」である。
TikTokやSHOWROOMなどのプラットフォームによる生配信では、ステージのキリッとした佇まいとは真逆の「その辺にいるギャル感」すら滲み出る親しみやすさが魅力だが、何度も「かもちゃんがいちばん!」「かもちゃんだけ見てー」と画面の向こうから微笑みかけられると、こころの奥の確固たる自信が伝わってくる。
じっさい、『僕通』のライブを見に行って、全体の動きを観察しようと心がけていても、自然と賀茂さゆだけを追いかけてしまうことが少なくない。
見る者の目をいちど捉えたら逃がさない、挑戦的な瞳は「こっちにおいで」と呼びかけられている錯覚を誘発する。
その魅力の起源について訊いてみた。
さゆ
「子供の頃からダンスが好きだったんです。もう、ほんっとに好きで。ダンススクールに通い始めて『ジャズファンク』の分野のダンスを習っていました」
『ジャズファンク』は、伝統的なジャズダンスのしなやかな動きに、ヒップホップなどのストリートダンスの力強さやキレを融合させたダンススジャンルを指す。
ジャズダンス特有の「身体のラインを美しく見せる」動きに加えて、音に合わせて「パッ」と止まるキレやアクセントの強さが特徴として挙げられる。
以前、賀茂さゆと会話している時に「静止の時の姿がめちゃくちゃ美しいね」と感想を伝えたら「ありがとう!それ、めっちゃ意識してるんだよ!」と答えてくれた。
静止の美しさは、ジャズファンクを習い続けて培った賜物であり、ダンススクールに通っていたとは知らない人に「あの動きは美しい」と思わせるのが、賀茂さゆが選ばれしアイドルであることの証左である。
「でもね」と彼女は続ける。
さゆ
「私、広島出身じゃけん…」
賀茂さゆは、語りモードになると、自然に広島の言葉とイントネーションでしゃべり始める。ここでは標準語にしてまとめるが、彼女が広島のイントネーションで熱弁する姿を想像してみてほしい。
広島県で生まれ育った賀茂さゆは、高校卒業時に、いちど壁にぶち当たる。
地元ではダンスを生かした仕事がほとんどない。ダンスを披露できる華やかな世界は都会に集中している。
賀茂さゆは東京に出た。ダンスを披露する場を 求めて上京したのかと思いきや、彼女の就職先は一般企業だった。
仕事をしながら、東京でもダンススクールに通った。ダンスが好きなことに変わりはなく、趣味としてでも踊っていたかった。
やがて、アイドルのオーディションという存在を知る。その時、賀茂さゆに「後悔」の念が浮かんだ。
さゆ
「簡単に夢をあきらめちゃって、それでいいのかなって。
それで『アイドルになるので辞めます』って言って辞表を出して、オーディションを受けに行きました」
オーディションに合格してから職場を去るのではなく、未来が不安定なままに次の1歩を踏み出したところに、広島人らしい「負けん気」を感じるエピソードである。

さゆ
「おばあちゃんになってもアイドルやってると思う」
賀茂さゆは瞳を輝かせた。アイドルになってからは、自分がアイドル以外の仕事で生きていくなんて考えられなくなっている。
今の自分が大好きだし、それを伝え続けていきたい。
さゆ「たとえば1か月に1回『僕通』のライブに来れる人がいたら、その月イチの楽しみが、その人の人生の支えになったら嬉しい」
そのために「見え方」をどこまでも追究する賀茂さゆには、本当にアイドルとしての終わりは無いのかもしれない。
【来玲町しあり】もどかしさの正体を具体化してくれた『僕通』の楽曲…歌唱で大切にこころを紡ぐ

⬆️来玲町しあり
私と『僕通』の最初の接点は来玲町しありだった。
2025年の1月。ライブハウスに向かう途中の街頭でフライヤーを渡されたのが始まりだった。
その時、ショートカットに包まれた彼女の表情がとても思い詰めているように見えた。
「アイドルと保育士を兼任している、くれまちしありです」
『保育士』というワードに反応して、立ち止まって話を聞くことにした。
他にキックボクシングのジムにも通っている彼女と、アイドルの話をまったくせず、その当時の社会状況や時事ニュースについて延々と話し合った。
その時から彼女のことを『くれまち先生』と呼ぶようになった。
いま振り返れば鮮明に思い出せるのだが、当時は別れ際に「Xのアカウントをフォローしとくね」と約束して、ライブハウスに向かった私の記憶から、さっぱり消えてしまった。
その1か月後。
『新宿HEIST』で開催されたライブイベントで『僕には通じない』のライブを初めて目にした。
HEISTが他のライブハウスと大きく違うのは、ステージが扇形になっている点である。舞台の面積は、やや狭い。
何度も立ち位置を入れ替えながらタオルを振りまわす5人のパフォーマンスを眺めているうちに、ひとり、小柄ながら激しく動き、汗だくになっているショートカットの女性を見つけた。
その時の『僕通』のライブ時間は20分間。
プロレスに例えるなら『20分1本勝負の1対1のシングルマッチ』で、20分間、全力で集中して走り回り攻めまくっているような。見えない敵と闘っているような。
ただ、その表情はやわらかい笑顔だった。
ショートカットの髪型が乱れ、首筋の汗がキラキラ光る彼女の姿が脳内にこびりついて、目が離せなかった。
アイドルのライブでは、自分たちの出番が終わった後に『物販』と呼ばれる、グッズ販売やチェキ撮影の時間が確保されている。
『僕通』の『初めての人は無料で写真が撮れる』というサービスに興味を抱いて、物販に寄ってみた。
その時点では、ボーイッシュな外見と中性ボイスに魅了された蓮水ゆうと話してみたいと思っていた。
物販の場所でキョロキョロしていると『20分1本勝負』の女の子が「あれ?」と近づいてきた。
「どこかで会ったよね……絶対に会ってる!」
誰かと間違えているのだろうと思いながら会話を始めたら、保育士とアイドルを兼任していて、キックボクシングを習っているという。そこで私も「あーっ!」と思い出した。
Xのフォローも忘れていたことを告げると、プンプンと怒り出した。まさに『プンプン』という感じだった。
さらに隣りのロングヘアの美人にも「あーっ」と声をあげられ「うちにも声かけられたことあるでしょ」と言われて、その美人が賀茂さゆという名前であることを思い出した。賀茂さゆのアカウントもフォローし忘れていた。
2人にジトっとした視線で見つめられたところで、無料でトークできる時間が終わってしまい、蓮水ゆうに苦笑されて帰ったのがファーストコンタクトだった。
今回のインタビューで、くれまち先生に『ライブで自分のいちばん見てほしいところ』を問うと、先生は即答で『歌』と答えた。

来玲町しあり(以下、しあり)
「ダンスは苦手(笑)。かもちゃんが『ダンスのかもちゃん』って言われるなら、私は『歌のしあり』って言われたい」
くれまち先生は、10月4日の自身の生誕祭ではカバー曲を数曲、ソロで披露して『渋谷DESEO mini』に集まった超満員のフロアに笑顔の花を咲かせた。
最初はド緊張していたと振り返る彼女は、落ち着きを取り戻すと、派手なダンスを見せるよりも、言葉のひとつひとつを大切に紡ぐことに集中した。
『僕通』の舞台では『全力でぶつかってくる』イメージだったが、本人は『歌』の面での成長をいちばんに目指している。
しあり
「確かに、私が『歌』で他のメンバーに負けたくないってことは、あんまり伝わってないかもしれないねー。それがこれからの自分の課題」
『ももいろクローバーZ』や『私立恵比寿中学』などの、可愛いだけでなく全力のパフォーマンスで泥臭いまでの熱量を発生させるアイドルを見てきたくれまち先生。
様々なアイドルを目にするうちに、少し憂いを帯びた感情的な表現を一貫するアイドルグループにも興味を持つようになった。
彼女の経験はすべて『僕通』でのパフォーマンスに凝縮されている。くれまち先生が『全力で個性を輝かせるアイドル』として記憶されるのは当然のことなのかもしれない。
先生に『僕通』のいちばん好きな楽曲は何かと質問すると『青白の世界に重ねて』を挙げてくれた。
しあり
「私の『アイドルの理由』のヒントになる曲だと思う。歌詞の中に『もどかしい』っていう言葉が出てくる。私もそうだし、たぶんみんなも、心の中にあるもどかしさをどうにもできなくて、立ち止まった経験があるんじゃないかな。
この楽曲をいただいた時に、共感に包まれた。『もらうばっかで 何も返せないのがもどかしいけど』っていう部分が、当時の自分と重なりあって。お金と時間をかけて推してくれる人たちに『どうやって返すか』のヒントになった。自分が最高のパフォーマンスを見せて、こころから思っている言葉を曲に乗せて大切に歌っていくことだっていう心境にたどりついたな。
ねえ、帰る時に歌詞を追いながらじっくり聴いてみて!」
他に仕事を持ちながらのアイドル活動 切実な『知ってほしい』『一度見てほしい』
くれまち先生は、毎日、自分が食べるお弁当をXに画像付きでポストしている。
バナナだけの時とか、みそ汁に豆腐を入れただけの時など、心配になってしまうようなメニューの時が「ほとんど」である。

しあり
「節約が大事だから。慣れると、つつましい食事でも逆に極めたくなって楽しくなるw」
平日はフルタイムで保育士として働き、アイドルとして年に200本近くのライブを披露する。
しあり
「オンとオフをしっかりしてるから。保育園にいる時には保育士として楽しく過ごしてるし、アイドルをやってる時はアイドルに全力集中する。自分でもうまく切り替えてると思う。どっちも楽しいから、疲れを感じることもあるけど、どっちも続けたい」
現在『僕通』のステージに立つ蓮水ゆうと賀茂さゆも、アイドルの時間以外に別の仕事をしている。
そこに現状のライブアイドル界隈の金銭面での厳しさがある。現状では、アイドル1本でやっていくのは難しい。
さゆ
「だからこそ、もっとたくさんの人に『僕通』を知ってほしい。知ってくれて、見てくれるまでは何も始まらない。私たちのライブを見てくれたら『いいな』って思ってもらえる自信があるから、まずは1回、見てほしい」

⬆️街頭ではフライヤーを1枚ずつこころをこめて配付
アイドルの中でも、一般的に「地下」と呼ばれる界隈には、数えきれないほどのアイドルグループとアイドルが存在する。
まったく知らない人が『僕通』に出会ってくれる確率は高くない。
さゆ
「ライブに来る機会が無くても、YouTubeなどの動画やサブスクで『僕通』』の曲を聴いてみてほしい。『僕通』の曲には、綺麗事だけじゃない、現実と理想に挟まれる人たちの『リアル』が描かれてるから、きっと何かが心の琴線に触れるはず」
賀茂さゆのオススメ曲は『無いものねだり』。
さゆ
「『後悔なんて抱いてないよ だってまだ何もしてないよ』っていう歌詞が、何度聴いても刺さる。なんならライブでこの歌を歌っている時にも刺さってます(笑)。ネガティブな時に聴くと、さらに刺さるんよ」
『排他エンヴィー』 の深すぎる歌詞の世界に迷い込む
ちなみに筆者の私が『僕通』で好きな曲は『排他エンヴィー』。
『排他 = のけ者にする』
『エンヴィー = 嫉妬』
2つの言葉をそのままの意味で並べてみると、他人を拒絶しながらも誰かを羨まずにはいられない『矛盾』した感情が浮かび上がる。
この時点ですでに難解な歌詞が続くと予測がつく。
その極致が『騙され合いはどっちが負け?』という問いかけだ。

⬆️『排他エンヴィー』の中盤の歌詞
「騙し合い」で「どっちが負け」たかは、複数の解釈を踏まえたうえで「騙されたほうが負け」という答えを導くことができる。
しかし『騙され合い』という勝負における『どっちが負け?』という判定は、どうすれば決まるのだろうか。
さゆ
「確かに深い」
しあり
「え? あー、うーん」
2人からはプロデューサーさんに怒られそうな回答が返ってきたがww、蓮水ゆうだけは確信に満ちた笑みを浮かべた。
ゆう
「曲全体と前後の歌詞をよく読んで、考えてみてください」
答えは聴いた人それぞれの解釈によるということだろうか。
お互いに『騙され合う』という状況が、まず難しい。騙され合うためには、両者が相手を「騙している」状態である必要がある。
続いて双方が「相手が自分を騙していることに気がついていながら、あえて騙されることを選んでいる」自分を演じることで成立する関係だ。
ここに現代社会に巣食う「共依存」の病理を照らし出す一面が見えてくる。
騙されているフリとは、たとえば社会的に問題になっている「DV(=ドメスティック・バイオレンス)」の心理に通じるものがある。
「自分がいなければこの人はダメになってしまうから、騙されてあげる」という歪んだ優越感。
その「必要とされてる感」をどちらもが抱えていて、結局は自分が相手を必要としている。それは明らかに相手への「依存」を伴っている。
もはや騙され合わなければ生きていけない「共依存」。
そう考えると『排他』と『エンヴィー』が並ぶ不思議にも解明の糸口が見えてくるのだが……
とにかく人のこころの深淵をチクチク刺してくるのが『排他エンヴィー』である。物語の結末で希望に導かれるのか、絶望に堕とされるのか、ぜひ最後まで聴いてみてほしい。
ワンマンのチケット目標販売数に【1枚】足りなかった悔しさをポジティブに受け止めて
『僕通』メンバーは、12月12日の『礼賛』と19日の『残響』と名付けられた2週連続ワンマンライブで、それぞれのチケット販売数の目標を『100』に設定した。

⬆️チケットのデザインは蓮水ゆうが担当した
とあるライブの後に賀茂さゆにワンマンライブへの意気込みを訊いた。
さゆ
『12日のライブで200%、19日のライブでも200%、合計400%のパワーで盛り上げます!』
12日の安全ゾーンオンリーライブのチケットのほうが、19日のアグレッシブゾーンオンリーのチケットよりも伸びていたが、直前になっても『もうすぐ100枚』のところで止まっていた。
12月10日。メンバーは「最後のお願い」として「目標達成するまでチケットを売り続ける」決意を表明する。
日付が変わって、午前1時13分。Xに『僕通』運営がポストした内容は
【運営STOP
ソールドまで、という話でしたがこれ以上は限界と判断したのでタクシーで強制送還させました】

メンバーがタクシーに乗せられて帰っていく様子の画像が添付されていた。
この頑張りがファンの心に届いた。12日は目標枚数を達成することができた。
『灰空フロム』が披露されると、どこかの分岐で間違えて、心がすれ違い始めた哀しい物語を紡ぐ歌声に涙を見せるファンもいた。
公演終了時には『礼賛』の拍手が鳴り止まなかった。
19日は、メンバーが出てきた途端にライブハウスが覚醒したかのように、フロアのファンがアグレッシブに前方に突っ込んでいく。
ファンが全身を揺らして熱狂する。楽曲に合わせて叫ばれるコールが、メンバーの歌声とともに『残響』として記憶に残るイベントになった。
最後に、チケットの販売枚数が蓮水ゆうから発表された。
99枚。
あと1枚、足りなかった。
悔し…いけれど、現実を受け止めたメンバーは、今後の活動での飛躍を誓った。

2026年6月15日 渋谷クラブクアトロで単独ライブ開催
『僕には通じない』は2026年6月15日に『渋谷クラブクアトロ』で単独ライブをおこなうと発表した。詳細発表はこれから。
上半期はこのイベントに向けて、こつこつと活動を続けていく。
願わくば、ライブに一度、足を向けてみてほしい。1月からは月1回のペースで『定期無銭公演』が再開されているので、そこから入ってみるのもオススメだ。
✄-------------------‐✄
賀茂さゆによる最後のひと言
インタビューの最後に、賀茂さゆのチェキを購入して、コメント記入の箇所に
「賀茂さゆとは?」
をひと言で表して、とお願いしてみた。
長考の結果、そこに書かれていたのは。
さゆ
『音楽で死ぬ!』
意味を拾いそびれた私に、彼女は「次はもっと語らせて!」とアーモンド型の両目を細めてケタケタ笑い、手を振った。

✄-------------------‐✄
⬇️僕には通じない 公式X
⬇️蓮見ゆう X
⬇️賀茂さゆ X
⬇️来玲町しあり X
【僕には通じない】
2021年6月結成。強くありたい「僕ら」のホンネを、ボカロ×ロック の疾走感溢れる高速BPM楽曲にあわせて体現するガールズユニット。 VOCALOID™をシンセサイザとして使用し、世界観を強めている。