『アイドルの理由』は、筆者(せしる)がライブハウスで出会った『本気のアイドル』『本物のアイドル』『気になって仕方がないアイドル』について、アイドルさん本人へのインタビューを中心に紹介し、その「こころ」に迫る企画です。
今回はアイドルグループ『チギリ』に所属し、2026年3月17日の卒業ライブで、アイドル活動を一旦休止する、檽 汐目(きくらげ しおめ)さんにインタビューし、ノンフィクション記事として紹介します。

⬆️檽 汐目
(画像等は公式X、インタビュー当日の撮影、チェキなどを使用しています)
前編・後編の2回に分け、この記事は前編です。
《後編》はこちら
⬇️
【アイドルの理由:檽 汐目(きくらげ しおめ)後編】究極の目標は世界平和!彼女がアイドルを続ける理由
【アイドルの理由:檽 汐目(きくらげ しおめ)後編】究極の目標は世界平和!彼女がアイドルを続ける理由 - ゆいパンク神推し『地下を照らす太陽』&気になるアイドルインタビュー&ライブ感想記
SHOWROOM配信で「次回までの宿題です。あなたにとっての『幸せ』とは?」
2026年1月2日に、地元・横浜でのライブでアイドルグループ『チギリ』のメンバーとしてパフォーマンスを披露し、いったんアイドル活動に区切りをつけた、きくらげ先生。
私(せしる)が檽汐目を『きくらげ先生』と呼ぶのは、彼女が独特の哲学をもつ、アイドル界でも稀有な存在だから。
ある日の配信アプリ『SHOWROOM』での生配信で、きくらげ先生は「宿題です。次の配信までに、あなたにとっての『幸せ』とは何か、答えを用意しておいてください」と言って、配信停止ボタンを押した。
ここまで壮大な問いをリスナーに投げて配信を終わらせるアイドルが他にいるだろうか。
きくらげ先生がアイドルの世界に興味を持ったのは、高校生活の頃。それまでは、国民的に有名なアイドルの名前を知っているくらいだった。むしろ「アイドルなんて大したことないでしょ」と歯牙にもかけないほど、接点が無かった。
幼い頃からアニメが好きだった。アニメでいちばん好きな作品は『ラブライブ』。
だが、それよりもきくらげ先生の人生に大きな影響を与えたものがある。
ドラマ『相棒』である。

『相棒』の右京さんが好きすぎて結婚したかった……その理由とは?
2000年に初放送されたテレビ朝日系列のドラマ『相棒』は、2026年現在も放送が続いている、だれもが知っている刑事ドラマ。
水谷豊さんが演じる杉下右京が名推理を展開し、特命係の相棒とともに事件を解決に導く勧善懲悪型の番組だ。
勧善懲悪といえば『水戸黄門』や『アンパンマン』のように、毎回、正義が悪を成敗して「めでたしめでたし」で終わるのが常道。
しかし『相棒』は、毎回、悪事を暴く勧善懲悪を見せつつ、ハッピーエンドで終わる回ばかりではない点にオリジナリティーがある。
犯人のトリックの奇抜さや終盤の見事などんでん返しの魅力とともに、時にはバッドエンドに振り切ってでも「正義とは何か?」を視聴者に問いかけてくる。
きくらげ先生も『相棒』の魅力に取り憑かれていた。
きくらげ「右京さんが大好きすぎて、結婚したかった」
先生と私は、インタビューの場であることを忘れて『相棒』の魅力について語り合い始めてしまった。聞き手として話を先に進めなければいけない役回りの私が、興奮して半分以上しゃべってしまったかもしれない。
それほどまでに、きくらげ先生と私は『相棒』に、共通の影響を受けていた。
きくらげ「右京さんとは、今まで会ってきた人よりも、いちばん話が合うかもしれない。自分も右京さんみたいになりたい」
きくらげ先生が『相棒』の中でもとくに好きなのが、右京さんが亀山薫(寺脇康文さん)と初めてコンビを組んだ、草創期の作品群だ。
きくらげ「あの頃の脚本が好きだった。今、亀山さんが右京さんの相棒として戻っているけど、脚本家がだいぶ入れ替わったからね」
『相棒』のメイン脚本家は、第1話から現在まで担当しているが、その他の脚本家陣はだいぶ入れ替わっている。
きくらげ「最初は、右京さんと一緒に行動しているうちに亀山さんが成長していくっていう軸があったよね」
確かにその通りだ。初期の右京さんと亀山薫は「理屈」と「感情」の対比が鮮やかだった。冷静沈着で論理的な右京さん。熱血漢で直感的、体力自慢の亀山薫。
きくらげ「毎回、脚本家は違うんだけど、右京さんと亀山さんの関係はしっかりしていた。事件の謎を解くのが右京さん。犯人に怒りの感情をぶつけるのが亀山さん。右京さんってスペシャル回ぐらいじゃないと怒らなかった。この犯人、右京さんに怒られるなんて、よっぽどだぞって。
それが、相棒が代わるにつれて、右京さんが怒るしかなくなってきた。右京さんと相棒との対比が薄くなって、右京さんが声を荒らげる回が多くなっちゃって。それがショックだったな」
この人は心の底から右京さんのことが好きで、その変化をよく見ているなと感心させられた。
きくらげ「右京さんが実在してたら、平和になるよね。みんなが右京さんみたいな考え方だったら、マジ世界平和になるよ」
アイドルとの最初の接点は『ラストアイドル』…過酷な入れ替えバトルに感情移入して
きくらげ先生がアイドルに興味を持つきっけとなったのは『ラストアイドル』という、アイドルの過酷なオーディション番組である。
秋元康さんが総合プロデューサーを務めたこの番組の最大の特徴は「入れ替えバトル」だった。
7人の「暫定メンバー」に対し、毎回、挑戦者が現れる。挑戦者は7人の中から1人を指名して、パフォーマンス対決をおこなう。その日の審査員1人が独断で勝敗を決めて、挑戦者が勝てば、その場でメンバーが入れ替わるという、あまりにもシビアなルールだった。
きくらげ「究極のアイドルを作るためのバトルで、毎回みんな泣いてた。そんなの耐えられないよね。私が応援してた子もバトルに負けて、入れ替わっちゃって。
ただ、その子はサブユニットのような形で戻ってきて、またアイドルしてくれたから、応援してた。なんかね、いい子なんだよ、すごく。
今の私は、好きなアイドルのタイプは実力派とか楽曲派とかなんだけど、アイドルを最初に好きになった頃は、人柄とかも込みで全部好きになってた」
アイドルを見る側だったきくらげ先生は、アイドルという存在について、深く考えるようになった。
きくらげ「アイドルって、かわいくて完璧なものだと思ってた。でも、それだけじゃないんだなって。もう、人生そのものを見せるような仕事だったりするわけで。
人に勇気を与える存在。自分もそっち側の人になりたいなって思うようになった。
もともと、どうしたら世界が良くなるんだろうって考える時間が多かった。それってまさに哲学だよね」
ついに「哲学」という言葉が、本人から放たれた。どうしたら世界が良くなるんだろう。人それぞれにとっての幸せとは何か。
きくらげ「たぶん私がアイドル界でいちばん思想が強いと思う(笑)」

檽汐目の音楽活動の根底にある2つの意味での『すくい』とは?
きくらげ先生がアイドルとして音楽活動を始めた時に強く思ったことは、2つの意味での『すくい』だった。
1つ目は『救い』。
きくらげ「アイドルになる前も、なんだかんだで音楽に救われきた。
最初は音楽に救われていることを自覚してなくて、音楽を聴かないという人がいることを初めて知った時があって。私が『どんなジャンルの音楽が好きなの?』って聞いたら『音楽は聴かない』って答えた人がいた。それからいろんな人に聞いてみたんだけど、2割くらいの人は『ごめん音楽聴かないんだ』って。
『じゃあ、私、音楽好きなんじゃね?』って気がついたんだよね。私にも伝えたいことがあって、それで救われる人がいるなら、音楽活動をやってみたいと思った」
もうひとつの『すくい』は『掬い』である。
「救う・救われる」の意味はわかりやすいが「掬う・掬われる」のほうは、ちょっと解釈が難しい。
「掬う」とは、一般的に「液体や小さい物を下から持ち上げる」ことをいう。「金魚すくい」はこの「掬い」のことである。
きくらげ「私が誰かを『掬える』こともあるんじゃないかなって。例えば誰かが『人生うまくいかねえな、死にてえ』ってなったとして、でも、別に幸せになりきらなくても死なない、みたいな。
前者のほうの『救い』の『救われる』ってほどではなくても、私の音楽を聴くことで『まあ生きていようかな』って感じてくれたら、その人の人生のセーフティーネットみたいになるんばゃないかなって」
なるほど。
「あの人の音楽に救われた」という表現は、アーティストから人生に多大な影響を与えられたことが明確に伝わる。
一方で「掬われた」のほうは、誰かの音楽に触れているうちに、無意識に近い形で前向きになったというニュアンスだろうか。
きくらげ先生の音楽が「掬う」ことによって「掬われた」人が「死にたい」から「生きていよう」に変わる。
確かに「救う・救われる」と「掬う・掬われる」では違う。
音楽は人を救う。
音楽は人を掬う。
そこまで考えてステージに立つアイドルがどのくらいいるかはわからないが、きくらげ先生の音楽活動には常に哲学がある。これはきっと、彼女の強みだ。

歌詞にある言葉たちを丁寧に表現 「書く」ことが好きだからこそ
彼女が初めてオーディションを受けたのは「地上」のアイドルだった。ただ「地上」のオーディションは、いつも開催されているわけではない。
まずはアイドルにならないと何も始まらない。いろんなオーディションを受けまくった。
初めて受かった事務所を、彼女は数ヶ月で辞めている。
きくらげ「ちょっと自我が強すぎたかな。自分のこだわりとプロデューサーさんのこだわりが違いすぎて、合わなくて。だったらやめたほうがいいよ、と。いま振り返ると『若かったしな』ってなる。
でも、そこから続ける意味もあるよね。向き不向きで言ったら、アイドルには絶対向いてないんだけど。歌もダンスもやってこなかったからね。
私、本を読んだり絵を描いたり、机にかじりついているタイプの人間だったから、どっちかっていうと『書く側』のほうが好きかもしれない」
目の前で話す、冷静に自分を分析する長髪にメガネの女性のシルエットに、図書館の席で厚い本を読みながらペンを走らせる文学少女の姿が重なった。
私がきくらげ先生にそのことを話して「作家に向いてそうなイメージ」と伝えると、先生は口元を緩めて言った。
きくらげ「私、作詞もやったことがあるんだよ」
それはとても腑に落ちる返事だった。哲学は、身体表現よりも、言葉で表現したほうが伝わりやすい。
チギリの代表曲ともいえる『契り』という楽曲の中で、きくらげ先生が歌うパートに、印象的な歌詞がある。
『気づいたんだ。歌うってことは、傷つくことだ』
この部分を初めて聴いた時に、私には意味がわからなかった。なんで歌うことが傷つくことなんだろう。
あるライブの特典会で、きくらげ先生に疑問をぶつけてみると、先生は表情を変えずに言った。
きくらげ「確かに難しいよね。でも、この曲を何度も何度も繰り返し聴いたら、わかってくるんじゃないかな。あと、その部分に気がついたことが大事だと思う。よく考えてみてね」
『相棒』を『考える教科書』として位置づける自分が『相棒の右京さんが大好きなアイドル』に「考えるきっかけ」を与えられるとは!
その直後に、きくらげ先生が初期の『相棒』が好きだった理由を思い出して、衝撃が走った。
『あの頃の「脚本」が好きだった』
彼女が「ストーリー」ではなく「脚本」という言葉を使った意味の重大さに、ようやく気がついた。
「ストーリー」が登場人物の設定やテーマを土台にして、こんな展開にしようかなと考えていくものだとしたら、「脚本」はストーリーを深堀りしていくための最適な言葉を当てはめていく作業の成果である。
右京さんと結婚したかったアイドルは、右京さんのことが好きすぎるがゆえに、独特の思考に至り、それを他者に押しつけることをしない。
それから、何度もチギリのライブを見て、今は別のメンバーが歌っている『歌うことは傷つくこと』について、いまだに答えを見つけることができない。
この曲の歌詞を書いたのはきくらげ先生ではない。だが、初めて聴いた時から『契り』の該当部分が訪れるたびに戦慄を覚えるようになったのは、彼女の表現に何かを訴えるチカラがあったからに他ならない。私はきくらげ先生に「掬われた」のかもしれない。
震える私の前で、きくらげ先生は、アイドル活動を続ける理由を語り始めた。
そこにも、檽汐目ならではの『想い』がたっぷりと詰まっていた。
それは、……
【後編に続く】
【アイドルの理由:檽 汐目(きくらげ しおめ)後編】究極の目標は世界平和!彼女がアイドルを続ける理由
⬇️
【アイドルの理由:檽 汐目(きくらげ しおめ)後編】究極の目標は世界平和!彼女がアイドルを続ける理由 - ゆいパンク神推し『地下を照らす太陽』&気になるアイドルインタビュー&ライブ感想記
✄-------------------‐✄
⬇️2026年3月17日 檽汐目『チギリ』卒業公演開催決定!

🗓2026年3月17日(火)
📍文京HEAD POWER
⏰open17:40/start18:00
💰予約¥2,500/当日¥3,500
チケット予約はこちら
⬇️
檽 汐目 卒業公演 のチケット購入・予約は TIGET から
🟫🟧檽汐目 Xアカウント🟧🟫
⬇️
《関連記事》
【アイドルの理由『僕には通じない』】来玲町しあり、賀茂さゆ、蓮水ゆうの場合【インタビュー】
⬇️
【アイドルの理由❶『僕には通じない』】来玲町しあり、賀茂さゆ、蓮水ゆうの場合【インタビュー】 - ゆいパンク神推し『地下を照らす太陽』&気になるアイドルインタビュー&ライブ感想記